「読書」は社会人の最高習慣だと言える3つの理由
✍️記事要約
もしもあなたが、なんらかの問題に直面しているならば、読書がその問題の解決を助けてくれるかもしれません。読書療法を意味するビブリオセラピーと、科学的な観点からその理由を説明しましょう。
■ 読書には「問題解決」という効用がある
精神科医の樺沢紫苑氏は、読書の目的として「学び」と「自己成長」を挙げ、もうひとつの「重要な効用」として、問題や悩みを解決することを挙げています。同氏によれば、
この世の中の悩みの95%以上は、本を読めば「解決法」がわかる
のだとか。そして、その解決法を実行することにより、改善へと向かえるそうです。
しかし、悩みを抱えながら何もせず放置すれば、状況が悪化して「そのストレスでうつ病になるかもしれないし、それに耐えきれずに会社を辞めているかもしれません」と樺沢氏は警鐘を鳴らします。だから――
たとえば人間関係に悩んでいるとして、その解決法や対処法が書かれている(自分に合った)本を選んで読み、それらをひとつひとつ実行していけば、悩みは徐々に減っていくとのこと。それに、
解決法を知るだけで気分は楽になる
そうです。実行に至らなかったとしても、精神的な部分には作用してくれるのですね。
(参考およびカギカッコ内含む引用元:ダ・ヴィンチWeb|「あなたの悩みを解決する」読書の仕方とは? /『インプット大全』⑨ ※同資料内の図のなかの文字も含む)
■ 「ビブリオセラピー」の定義と問題解決
読書の効果は古くから知られており、海外では薬のように本を処方する取り組みまであるそうです。それをビブリオセラピーというのだとか(参考:日本読書療法学会|日本読書療法学会について)。
ビブリオセラピーとは、読書療法を意味する言葉で、
イギリスでは代替医療として政府に公認されていたり、イスラエルでは読書セラピストが国家資格になっていたり
するとのこと。
ちなみに、日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラーの、寺田真理子氏が会長を務める日本読書療法学会では、ビブリオセラピーを
「読書によって問題が解決したり、何らかの癒やしが得られたりすること」と定義
しているそうです。寺田氏によれば、
片付けの本を読んで部屋がきれいになるのも、ビブリオセラピーによって問題が解決した状態
(引用元:WORK MILL|本で心に癒やしを与える「ビブリオセラピー」ビジネスパーソンのための本の読み方・選び方)
と言えるのこと。
それなら、たとえば自分の仕事速度が遅いと悩む人が、時間をうまく使う方法が書かれた本を読んで、実践し、ほんのわずかでも効率化を図ることができ、前より生き生きと仕事ができるようになったとしたら、それも読書によって問題が解決しようとしている状態だと言えるはず。つまりは、ビブリオセラピーが効いていると言えるわけです。
■ 科学的な観点から見る読書の効果
ここまでは、本を読んで解決方法を知ること、その実行により問題を解決していくことが主な流れでしたが、ここからは、科学的な観点から見た読書の有用性を紹介していきます。
読書と「共感力」
ニューヨーク市のグリニッジ・ヴィレッジに位置する私立総合大学 The New School for Social Research の、2013年発表の研究では、文学小説を読むと心の理論が向上すると示されたそうです。文学小説の “内なる感情や思考” の詳細な描写が、感情の理解およびシミュレーションに結び付く可能性があるのだとか。
(参考:Science|Reading Literary Fiction Improves Theory of Mind)
東京大学大学院総合文化研究科・教授の丹野義彦氏(2019年3月時点)によれば、共感とは「他者の心を自分のことのようにわかること」で、心の理論はその「共感を支える心のメカニズム」なのだそう。
そして、心の理論は「他者が何を求め、何を考えているか、他者の心の中で何が起こっているかを推測する能力」であり、「他者の内面を理解して他者とのコミュニケーションを円滑に行う能力」を指すそうです。
(カギカッコ内引用元:LAP: TODAI Liberal Arts Program|信頼と共感──心理学から共感のメカニズムを探る)
一方で、メディアPR事業や研修事業を行なう、株式会社アットリーチェ代表取締役の木村明日香氏は、
共感力が高いと、取引先や顧客が抱えている問題を的確に把握でき、問題解決のためにすべき提案の精度を格段に上げられます
(引用元:Schoo(スクー)法人・企業向けサービス|共感力とは?共感力を身に付けるメリットや高めるための方法を解説)
と説明しています。
つまり、人の内面を丁寧に描写した小説を読めば「共感力」が高まり、それによって他者の問題を解決する能力が高まる可能性があるわけです。それなら読書は、あらゆる取引先および顧客をもつビジネスパーソンの、強い味方になってくれるのではないでしょうか。
■ 読書と「想像力」
また、東京大学大学院 総合文化研究科 教授の酒井邦嘉氏によると、たとえば映画やドラマのように、俳優さんの声・表情・動き・服装など、インプットされる情報量が多いと、自ら考えたり想像したり、解釈を加えたりする余地が少なくなってしまうそうです。
しかし、読書やラジオのようにインプットされる情報量が適度に少ないと、想像力で補わざるをえなくなるのだとか。だとすれば、本を読むことで必然的に想像力が鍛えられると、期待していいのではないでしょうか。
(参考:東京大学 大学院総合文化研究科 相関基礎科学系 酒井研究室|科学者に聞く! 読書は脳を創る)
ちなみに、経営コンサルタントの午堂登紀雄氏いわく、
繰り返しになりますが、ビジネスパーソンに必要な問題解決力の向上には、想像力が極めて重要なのです。
そもそも、問題解決に必要な「仮説」を立てる力は、想像から始まるからです。
(引用元:午堂登紀雄著(2017),『年収1億稼ぐ 人生戦略ガイド』,パンダ・パブリッシング.)
とのこと。つまり――あらゆる問題の解決を迫られるビジネスパーソンにとって、想像力は欠かせない能力であり、その想像力は読書をもってよく働き、鍛えられるわけです。
それなら、たとえば本の登場人物が「Aだと思っていたのに、Bだったなんて……!」と驚くシーンがあれば、読者も「え、どうして?」「ああ、そういうわけか」などと考えをめぐらせ、「だとすれば、〇〇といったこともありうる」などと想像力を働かせ、自分なりに解釈していくことになるはず。
そうした数々の読書体験(自ら考えたり、想像したり、解釈を加えたり)は、その人の想像力を高め、仕事がスムーズに運ばないときなどに、「こうだとばかり思っていたけれど、逆の方向から考えてみると、意外とアッサリ答えが見つかるかも」などといった、仮説を立てる力になってくれるのではないでしょうか。
これはもう、本を読むしかありませんね。
■ ビブリオセラピーにおける本選びのコツ
ここまで、読書が問題解決に役立つ理由について紹介してきました。世のなかにはものすごい数の本が存在しています。私たちの強い味方は、そこらじゅうにあふれているわけですね。なんだか勇気が湧いてきます。
ただ、心がモヤモヤしていたり、疲れていたり、自分で物事をコントロールする力を失っていたりしていては、目的の問題解決もままなりません。前出の寺田氏がすすめる「ビブリオセラピーに向いた本選びの5つのパターン」には、そうした心によく効くヒントが示されています。最後に、その5パターンを紹介しておきましょう(同氏の言葉を部分的に短くまとめたものです)。
自分をもっと知りたいなら ⇒ 絵本
絵本は深いテーマで描かれ、短いなかにテーマが凝縮されているので、大人だからこそ理解でき、忙しい人ほど向いている。
心の栄養を蓄えたいなら ⇒ 詩集・俳句集・児童文学
字が大きく短いので、疲れていても読みやすい。厳選された言葉が、栄養として心に染み渡る。
現実逃避したいなら ⇒ ファンタジー・SF
仕事もプライベートもしんどい人の、安全な避難場所として。
“べき思考” から解放されたいなら⇒哲学性のある児童文学など
知らぬ間に押しつけられてきた価値観を問い直し、物事を考えるヒントになる。
心が疲れているなら⇒心理学・精神医学テーマの “漫画” など
疲れた人ほど心理学を学ぼうとするが、まずは手強い専門書よりも、漫画などわかりやすい本がおすすめ。
(参考およびカギカッコ内引用元:前出の「WORK MILL」記事)
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問題に直面したときは「頭を抱えず、本を抱える」ことが得策かもしれません。ただし、心がひどく苦しいときは、早いうちに身近な人や専門家に相談してくださいね。