ビル・ゲイツが21歳の自分に教えたかったこととは
✍️記事要約
過去に戻って、若かったころの自分に対し、人生に関する賢明なアドバイスを与えることができるとしたら何と助言しますか?
ビル・ゲイツ氏が、この質問に答えました。時は2023年5月13日。アリゾナ州フラッグスタッフにあるノーザンアリゾナ大学(NAU)の卒業式スピーチでのことです。
卒業式への招待をほとんど断っているゲイツが、なぜ「U.S. News & World Report」の大学ランキングで284位の公立大学で講演したのか、不思議に思われるかもしれません。
まさにそこがポイントです。
ゲイツは、ノーザンアリゾナ大学は「大学卒業の価値を再定義している」と言います。
いかにエリートで入学が難しいかを宣伝するのではなく、できるだけ多くの人を受け入れ、大学教育の力でできるだけ多くの人生をより良い方向に変えていこうとしているのです。
アリゾナ州の高校をGPA 3.0以上の成績で卒業した人なら、誰でもノーザンアリゾナ大学に進学できます。所得が州の中央値である6万5000ドル(約913万円)より少ない世帯の学生は、授業料が無料です。
入学に必要な条件を満たしていない人も、一度コミュニティーカレッジに入ればそこからノーザンアリゾナ大学へ転入できます。
■学位を持っていないからこそ
よく知られているように、ゲイツ氏は学位を持っていません。持っているとすれば、卒業式スピーチを行なった人に与えられる名誉学位だけ。それは、ハーバード大学に入学したものの3学期だけで中退し、Microsoftを共同創業したからです。
そんな私が、卒業の何を知っているというのでしょう? 正直に言うと、あまりわかっていません。
ゲイツ氏はノーザンアリゾナ大学の卒業式で語りました。
そしてゲイツ氏は、「大学の卒業式」やその後の人生に役立ちそうな来賓の講演者たちの賢明な教えとはどんなものか、想像を巡らせたそうです。
ゲイツ氏自身は卒業式を経験していなかったので、次善の策として、慈善家、元CEO、かつての世界一の富豪といった肩書きを持つ67歳の立場から、ノーザンアリゾナ大学を巣立っていく卒業生にこんなアドバイスをおくりました。
1. 人生は一幕劇ではない
大学を中退してMicrosoftを創業したころのゲイツ氏は、この先もずっとそこで働くことになるのだろうと思っていました。
その考えが間違っていて良かったです。
彼はそう語りました。
これはゲイツ氏に限った話ではありません。1つの職場や職業でキャリアを全うする時代はもう終わっています。
2021年に発表されたある調査によると、アメリカ人の52%が転職を考えており、44%がそのための計画を実際に整えているそうです。
また、人生のどの時点においても、20年後どころか、10年後の自分が何を求めているのかを知ることは不可能に近いという専門家の話もあります。
ゲイツ氏は卒業生たちにそう語りかけました。
みなさんの中には、キャリア選びの判断を誤ってはいけないとプレッシャーに押しつぶされそうになっている人もいるかもしれません。
その判断は不変であるような気がするかもしれませんが、そんなことはありません。明日の仕事、あるいは今後10年間の仕事が、あなたが一生涯続けていく仕事である必要などないのです。
2. いくら頭がよくても、いつかは壁にぶつかる
自分は、知るべきことをすべて知っている――。
ゲイツ氏はそう思ってハーバード大学を中退したそうです。もちろん、その考えも間違っていました。
知識への道とは、自分が知っていることばかりに目を向けるのではなく、自分が知らないことに立ち向かっていくことです。
ゲイツ氏は続けます。
社会人になれば、誰もが遅かれ早かれ解決法がわからない問題に直面することになるでしょう。そうなった時には、冷静さを失わず、自分に正しい方向を示してくれる賢者を見つけてください。
まわりには、あなたを助けてくれる人がきっといます。大切なのは恐れずに助けを求めることです。
学校での勉強は終わったかもしれません。ですが、この先も生涯学び続けることはできますし、そうすべきです。
3. 「問題を解決する仕事」を追い求めろ
ゲイツ氏によれば、「変化をもたらすことによって生計を立てられる仕事」がどんどん増えてきているとのこと。そして、そのような仕事を追求する価値は十分にあると彼は確信しています。
大きな問題を解決するために取り組む日々を送っていると、最高の仕事をしようという意欲が湧いてきます。創造力を高めざるを得ませんし、人生の目的意識も強まります。
ゲイツ氏はそう語りました。
強い目的意識を持てば、価値のない仕事に何年もの時間を費やして人生を無駄にしてしまったのではないか、という疑問に襲われることもなくなるかもしれません。
ハーバード・メディカル・スクールの教授で著述家のサンジブ・チョプラ氏も、人生に目標を持てば、宝くじに当たるよりも幸せな人生がおくれると言っています。
4. 友情の力を軽んじるな
ゲイツ氏は、NAUを巣立っていく若者たちに対して、友人のポール・アレン氏とMicrosoftを立ち上げたエピソードを披露し、友人とのつながりもまた成功のカギを握っているのだ、と語りかけました。
友人たちは、あなたのネットワークです。あなたの未来の共同創業者であり、同僚です。
あなたにサポートと知識、助言を与えてくれる最高の存在です。
今日、あなたがステージを降りるときに持っているものよりも価値があるのは、あなたがステージの上で一緒に歩く人たちです。
5. ちょっと自分を甘やかしても、怠け者ではない
もっと早く学んでおきたかったことが1つあるとすれば、まさにこれだそうです。
皆さんぐらいの年齢だったころは、休暇には何の意味もないと思っていました。週末には何の意味もないし、ともに働く社員たちもそう思うのが当然だと思っていました。
事実、Microsoft創業当時のゲイツ氏は、自分のオフィスから駐車場を見張っては誰が早く退社したのか、誰が残業しているのかをチェックしていました。
自らが父親になってようやく、この考え方が間違っていることに気づいたそうです。
私がこの教訓を学ぶまでには、長い時間がかかりました。みなさんは私の二の舞を演じてはいけません。
人間関係を育むための時間をつくってください。成功を祝ってください。敗北から立ち直ってください。必要なときは、ひと息入れてください。まわりにいる人たちが休みを必要としているときも、大目に見てあげてください。
そして、卒業生たちにこんなメッセージを送りました。
人生の次のステージへ進む前に、少し時間をつくって楽しんでください!
筆者の新著『Career Self-Care』は、仕事にのめり込むことと自分とまわりの人々を努めて大事にすることがテーマです。
そして、この2つを両立させる方法を見つけることがいかに重要であるかと、それが可能であるかを説いています。
ゲイツ氏が言うように、職業人(特に起業家)の多くがこの大切な教訓を学ぶのは人生の後半に入ってからですが、それでは遅すぎるのです。
ほとんどの人は、自分自身をケアし、仕事以外の人生を持つことが、業績の向上にもつながります。
この大切な教訓を学ぶのが早ければ早いほど、手にする幸福と成功も大きくなるでしょう。