元財務省“超エリート官僚”が書いた「ビジネス教養本」の「すごい中身」とは
✍️記事要約
管理職向けのリーダー論はビジネス書の定番ジャンルだが、いま全国の金融機関関係者の間で密かに注目されている書籍がある。今春刊行された『管理職が持つべき決断力 戦史の「韻」をつかめ』(産経新聞出版)がそれだ。
地味なタイトルだが、内容は超実践的。そのノウハウを明かすのは財務省理財局長、国税庁長官を歴任した中原広氏だ。財務キャリア官僚として、国家財政の中枢で厳しい折衝を重ねてきた経験と豊富な戦史知識から得た教訓を詰め込んでいる。金融機関幹部向けのテキスト用に販売中というが、一般読者にとっても歴史を見る眼を鍛える教養書として使えるとして、一部で話題の書となっているのだ。
■日本の「病理」
「戦争という国家や民族の存亡を賭けた極限状況に関するものの方が、その緊張感や深刻さからより端的にヒントを示してくれるような気がします。そのため、本書の30の章のうちの大半が広義の戦史並びにそこに登場する人物に話題を採っております」
中原氏が「はじめに」でこう記すように、この本はカエサルやナポレオン、日本の戦国武将らが活躍した戦史に偏っている。
とりわけ、現代の企業や組織と通底する太平洋戦争にみる「病理」が数多く指摘されているのが大きな特徴だ。
そのベースとなる知識は防衛省が刊行した公式戦史102巻であり、手抜かりはどこにもない。
では、企業や組織と太平洋戦争を戦った日本軍に共通する病理とは何か――。
■「人事問題」の正しい考え方
中原氏は太平洋戦争末期の戦艦大和の沖縄への無謀な出撃決定を一つの事例として挙げている。
専門的知見やデータの裏付けで「無謀さ」が証明されているにもかかわらず、「空気による支配」が勝った代表的なケースだ。
この非合理的な「空気による支配」の危険を予防するには、特定の命題を絶対化しないこと、普段から訓練とはいかないまでもしっかりと意識することが肝要だと指摘する。
以前流行った「KY」とは「空気を読めない」ではなく、「危険予知」の略語としてとらえるべきだろう。
多くの企業が頭を抱える喫緊の人事問題への対応策も読みどころの一つだ。
第22章の「下に臨むに寛なり 池田輝政の人事政策」では、優秀な人材をどう慰留するかを、戦国・江戸期の武将・大名である池田輝政の事例から引いている。
寝ている間に両刀を盗まれ、職を辞する意向を示した臣下に対し、輝政は歴史上の類例を紹介してミスの軽重を論じ、見事慰留に成功したうえ、さらなる忠誠心を調達したケースを紹介している。
■ 元財務官僚が説く「リーダー論」
中原氏はこう記す。
「今日のリーダーたちも部下を慰留することがあるだろう。その際、慰めるだけではなく、理由付けまで用意するほどの配慮ができたろうか振り返ってもらいたい。あるいは、自ら質素倹約に努めて、有事に備え士を養うことができているか省みてもらいたい」
優秀な部下を慰留するしっかりとした理由付け、さらにはその部下が何があろうとその上司の元を離れない決意を強める――。人材流出のピンチをどうチャンスに変えられるか。人材獲得・流出が喫緊の課題となるなか、中原氏が説く池田輝政の事例は現代の管理職にとって必読といえるだろう。
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【中原氏の略歴】
中原広(なかはら・ひろし)
1981年、東大法学部卒業、財務省(当時は大蔵省)入省。2014年に財務省理財局長、2015年に国税庁長官。2016年、信金中央金庫入庫(本書刊行時は信金中央金庫副理事長)。
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■英訳
Leadership theories for executives are a staple genre in business literature, but a book that has quietly gained attention among financial institution professionals nationwide has emerged. The book, "Decision-Making Power for Executives: Capturing the 'Rhyme' of Military History" (Sankei Shimbun Publishing), was published this spring.
Despite its modest title, the content is highly practical. Hiroshi Nakahara, who has served as Director-General of the Financial Bureau of the Ministry of Finance and Commissioner of the National Tax Agency, reveals its insights. Drawing from his experiences in the central administration of national finance as a career bureaucrat and his extensive knowledge of military history, Nakahara has compiled valuable lessons. Though marketed as a textbook for financial institution executives, it is also regarded by some as an educational book that enhances one's perspective on history.
**Japan's "Pathology"**
"In the extreme situations of war, where the survival of the state or nation is at stake, the tension and seriousness can provide more straightforward hints. Therefore, most of the 30 chapters in this book cover broad aspects of military history and the figures involved in it," Nakahara writes in the preface.
The book focuses particularly on the "pathologies" observed during the Pacific War, which resonate with modern corporations and organizations. This analysis is grounded in the official 102-volume war history published by the Ministry of Defense, ensuring thoroughness.
What are these common pathologies between companies, organizations, and the Japanese military during the Pacific War?
**The Right Approach to "Personnel Issues"**
Nakahara uses the reckless decision to send the battleship Yamato to Okinawa in the final stages of the Pacific War as a case study. Despite expert knowledge and data proving its recklessness, the decision prevailed due to the "control by atmosphere." To prevent this irrational "control by atmosphere," Nakahara emphasizes the importance of not absolutizing specific propositions and maintaining a strong awareness, even if not formal training.
The previously popular term "KY" should be understood not as "cannot read the air" but as an abbreviation for "danger prediction."
Another highlight is addressing urgent personnel issues that many companies face. Chapter 22, "Magnanimous in Treating Subordinates: Terumasa Ikeda's Personnel Policy," references the strategies of the samurai and daimyo Terumasa Ikeda from the Sengoku and Edo periods on retaining talented individuals. It presents a case where Ikeda successfully persuaded a subordinate to remain loyal despite a mistake, using historical examples to discuss the severity of the error, thereby boosting loyalty.
**Leadership Theories by a Former Finance Bureaucrat**
Nakahara states, "Today's leaders may also have to persuade subordinates to stay. I want them to reflect on whether they have prepared not just comforting words but also reasons. Or whether they are striving for frugality themselves, nurturing their subordinates for emergencies."
Providing solid reasoning for retaining talented subordinates
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☘️ヤフコメ❗️ピックアップ☘️
メーカーなどの社長がコンサルになっているが、デフレ期に自分の大企業をボロボロにしたパターンの人も多いみたいで、そう言う方が経営哲学を書いてもとは思う。この人も含めて、財務省の官僚のかたがそのようなパターンとは思わないが、哲学を書く時間の前に、実際の日本の景気回復の実行を一刻も早くお願いしたいと思う。
✅ 体育会コネとかもあるらしいし一番は組織体質に合うかが問題だから全員ではないが、Z務省は人材の質では霞が関随一なんだろう。ただ、組織となると、財政効率改革も(インボイス、マイナ保険証含む)税制全般も下手糞。
あと、全員が英語読めることもない。まあこれは日本人共通の大きな壁。
>戦争という国家や民族の存亡を賭けた極限状況に関するものの方が、その緊張感や深刻さからより端的にヒント
カエサルやナポレオン、日本の戦国武将らが活躍した戦史に偏
ベースとなる知識は防衛省が刊行した公式戦史102巻であり、手抜かりはどこにもない。
太平洋戦争末期の戦艦大和の沖縄への無謀な出撃決定
専門的知見やデータの裏付けで「無謀さ」が証明され
特定の命題を絶対化しないこと、普段から訓練とはいかないまでもしっかりと意識することが肝要
以前流行った「KY」とは「空気を読めない」ではなく、「危険予知」の略語としてとらえるべき
✅ 官僚制では創造性や社会的実践経験が培われる事が極めて少なくなる。財務省という希少な世界やアカデミックな視点は悪くないと思われるが、それでこの世の中を評価するとあまり興味は湧かない。