子どもの自己肯定感が高まる「簡単マインドフルネス」とは
✍️記事要約
先進国の中でも自己肯定感が極端に低いといわれる日本人。どうやって自己肯定感は高めていけるのでしょうか。オンラインスクールでありながら全米トップ校として知られる「スタンフォード大学オンラインハイスクール校長」の星友啓さんが新刊『全米トップ校が教える自己肯定感の育て方』(朝日新書)で紹介した最新科学によるメソッドを特別に公開します。
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自己肯定感を高めるために、取り入れたいのが「マインドフルネス」のコンセプトです。
核となる考え方は、自分の意識を今感じていることや考えていることに向けて、そうした感覚や考えをそのままオープンに受け入れることです。
マインドフルネスは、今意識にあることをくよくよと複雑にあれこれ考えるのでもなければ、感じたり考えていることを「いい」とか「悪い」とか決めつけることではありません。
素直な自分の気持ちや考えを感じ取って受け入れる心の営み、また、そうした心の営みを引き出すための瞑想法や呼吸法などを、まとめて「マインドフルネス」と呼びます。
マインドフルな心の力を鍛えるとどんな良いことがあるのか?
まず、マインドフルな力で、周りの変化や自分の心の課題にフレキシブルに対応できるので、心が安定しやすくなり、感情を上手にコントロールすることができます。
また、ポジティブな気持ちが維持しやすく、人生の意義や幸福感もアップするなど、様々な心理的効果が確認されてきています。
心の問題や精神疾患などへの改善や予防にも効果があることが知られているので、精神医療での応用が進んでおり、着実な成果が上がっています。
例えば、最近では、マインドフルネスを使った認知セラピーが、うつ病や統合失調症などの治療に応用されています。
それだけではありません。マインドフルネスを身につけることで、集中力がアップして、高度に神経を研ぎ澄ませなくてはいけないような仕事に対するパフォーマンスも上がることがわかっています。
つまり、マインドフルネスは、心に良い影響を与えるだけでなく、頭も良くなる良薬なのです。
こうしたマインドフルネスのいい効果は、大人だけのものではありません。子どもたちにとっても同様にいい効果があります。
集中力だけでなく、認知能力の発達を促進し、感情や社会性の成長もサポート。
実際に、アメリカではマインドフルネスをベースにした教育サポートプログラムが導入されて、期待通りの良い結果を残してきています。
その一例が「マインドフル・スクールズ」(Mindful Schools)で行っている教育です。
「マインドフル・スクールズ」は、アメリカのカリフォルニア州で活動している非営利団体で、学校教育へのマインドフルネスの普及をミッションに掲げています。
これまでに6万人以上の教育者をトレーニング、子どもの健康をサポートしてきました。
ここで、「マインドフル・スクールズ」が行っている、非常にシンプルなプログラムをご紹介します。家庭でもできるものなので、親子でやってみてはいかがでしょうか。
「チーン」などと長めに音がなるベルか音叉などを用意しましょう。
以下の要領でマインドフル・リスニングと深呼吸を行います。毎日1、2分を続けていきましょう。
(1)まずは初めの儀式です。以下のセリフで始めてください。「はい、マインドフルネスな体の準備をしましょう。静かに、座って、目を閉じましょう」
(2)次のセリフを続ける。「今から聞く音に意識を集中しましょう。音が完全になくなるまで、集中して聞きましょう。音が完全に消えたら手をあげましょう」
(3)ベルなどの道具で、音を鳴らします。
(4)子どもの手が上がったら、深呼吸にうつります。「それでは、マインドフルネスに意識してゆっくりと手をお腹か胸に当てましょう。自分の呼吸を感じてください」
(5)子どもが呼吸に集中できるように声をかけましょう。ゆっくりと、「吸って、吐いて」と数回繰り返しましょう。
(6)終わりにもう一度ベルを鳴らして終了です。
前述した「マインドフルネス」の効果や目的を子どもにも共有して行い、終わったら子どもがどう感じたか感想を聞いたり、自分がやったときはどう感じたか、シェアし合うとより効果的です。
時間を決めて生活の中に組み込んでいくこと、周囲を片付けてマインドフルネスをするときだけのスペシャルな空間づくりも大切です。
星友啓(ほし・ともひろ)
1977年生まれ。スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長。哲学博士。東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程卒業。その後渡米し、スタンフォード大学で哲学博士を取得。オンライン教育の世界的リーダーとして活躍。