官僚に絶望して芸人に 44歳の挑戦
✍️記事要約
年末恒例のお笑い番組「M-1グランプリ」は、〈日本一の若手漫才師を決める大会〉として知られる。毎年、参加者は増え続け、18回目の今年は史上最多の7261組を記録した。
その中の1組がボケ担当の元官僚芸人まつもと(44)と、ツッコミのコメ(29)の二人。今年9月に“元官僚芸人”を看板に掲げたお笑いコンビ「イエスマン」を結成したばかりで、大手の松竹芸能の養成所で勉強中だ。
「芸人として、売れるところまで達するのは本当に難しい。でも、異色の経歴を持つ僕たちだからこそ、できることがある」
と力を込めるまつもとは、京都の進学校・洛星高校から京都大学経済学部に進学。大学院では情報学を専攻したエリートだ。修了後は総務省に入省し、霞が関で9年を過ごした過去を持つ。
「総務省は情報通信を管轄しているので、僕の研究内容と合っていた。当時は超の字のつく就職氷河期で、100社以上を受験してことごとく不合格。最後の最後で、何とか総務省に滑り込むことができたんです」
■「国家の前ではちっぽけ」
官僚時代は総務省にとどまらず、財務省や内閣官房、さらには岩手県庁への出向も経験したという。
「財務省では会見で使う大臣のコメント作りや、経営破綻した日本航空の再生スキーム作りに携わったことも。岩手での勤務は震災前でしたが、その後、僕の前に座っていた職員の実家が流されたとも聞きました」
人並みに立身出世を望んで飛び込んだはずが、
「やりがいを感じることが少なくて、それで絶望しちゃったんです。各部署の利権や思惑が重なりあっている世界ですし、あまりに組織が巨大過ぎて、たとえ事務次官でも一人では行政のあり方をなかなか変えられない。どんなに志はあっても国家の前では一個人の存在はあまりにちっぽけ。自分が何をしているのか、何のためにここにいるのか分からなくなってしまった」
まつもとは当時の自分を「歯車でさえない。むしろネジ」と振り返る。
■官僚芸人がいないと気付き…
そんな彼が芸人を目指した理由とは。
「もはや官僚を辞めることに迷いはなく、当時が40歳を迎えるタイミングだったことも理由の一つ。社会人は課長クラスになるまでは日常をソツなくこなすことが大切ですが、その先は周囲より秀でた強みがないと生き残りは厳しいですから」
果たして自分はこの先何ができるのか、何をしたいのかとセカンドキャリアを思案する日が続いたという。
「そんな時に見た、厚切りジェイソンさんが印象的で。お笑いとビジネスを両立させている姿に、お笑い界に“官僚芸人”がいないと気付かされた。それなら元官僚という肩書きを最大限に活用して、芸人としてビジネスや政治の話を面白く、分かりやすく伝えたいと思い立った。芸人といってもクイズが得意な人もいれば、家事や家電に詳しい人もいますからね」
■相方も高学歴
突飛にも思える構想に付き合うのは、慶應大学経済学部を卒業し、現在は大手金融機関に勤務するコメだ。
「休日などに体の可動域を広げようとストレッチに通ったりしているうち、そのお金を自己投資の一環というか、モノより経験に使おうと考えたんです。何か仕事にも生きるようなことに費やしたいと。もともとお笑いは好きで、勤め人をしながら養成所って通えるものかと調べていると、松竹芸能の養成所が土日に通えることが分かった。すぐに“行ってみよう”と思い立ちましたよ」(コメ)
狙いはバッチリだった。
「取引先との会話の際に、“お笑いをやってるんです”と言うと、すぐに打ち解けられたり。養成所では発声練習もあって、いかに自分が会社でハリのない声でしゃべっているかという点に気付かされたことも」(同)
当面の目標は「M-1グランプリで3回戦に進出すること」と口をそろえる。二人の挑戦は始まったばかり――。
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☘️ヤフコメ❗️ピックアップ☘️
これが20代の方ならまだ人生経験浅くて、考え直したほうがいい、
と思うが。経験豊かな方だから説得力ありますね。
私は61歳ですが、40代で考え方がしっかりして、おまけに体力不足
になってしまった。人生は一度きりだからね。
頑張ってください。
✅ こういう人たちに是非活躍してもらいたい。
確かに芸人の世界は学歴など一切関係ない非常に厳しい世界。仮にM-1に出場して優勝したからといって、芸人としての未来が保障されているわけではないし、面白かったりあるいはバラエティその他、得意な分野を生かして冠番組を持つように成長しないと生き残りはむずかしい。
売れるまではアルバイトの掛け持ちを余儀なくされる現実もある。
元キャリア官僚という経歴を生かした教養番組でも持てれば面白いかとは思う。
ぜひ頑張ってもらいたい。
✅ 大学院を卒業となると、勤務歴はざっくり10数年というところでしょうか。この勤務歴だとそもそも退職金はスズメの涙程度です。また国家公務員の給料は、世の中の人が思ってるほど高くないの実情。地方公務員も含めて長く勤めないと給与面でのありがたみは出てきません。現実的に貯金もなかなかできない状況だと思います。総合職採用であれば退職後の身の振り方がある程度保証されているから、旨味はそれ位だと思います。私も40代半ばで公務員とは縁を切りました。一生の大半を違和感を感じて過ごすか、定期的に振り込まれる一定額の給与を選ぶかは人それぞれですが。