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数字データが明かす“神の子メッシ”の意外な真実[2022.12.18]

数字データが明かす“神の子メッシ”の意外な真実

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✍️記事要約

✅ 「11歳で成長ホルモン欠乏症」「試合中は歩いてばかり」数字データが明かす“神の子メッシ”の意外な真実

アルゼンチン代表のエース、リオネル・メッシは世界を代表するスーパースターだ。そのメッシが「最後のワールドカップ」と位置付けるカタール大会で大活躍をしている。今回はそのメッシについて述べる。

天才の名を欲しいままにするメッシは、鉄鋼工場で働く父と家政婦の母のもとに産まれた。出身地はアルゼンチンで3番目に人口の多い都市・ロサリオ。11歳のときに「成長ホルモン欠乏症」と診断され、一時期は「サッカーができなくなるかもしれない」危機にあった。なにしろ、毎日足に痛みを伴う注射をする必要があり、治療代は1ヵ月で1000ドルにもなった。身長は150cmにすら達していなかったという。

 その後、スペインの名門サッカーチームであるFCバルセロナが、高額な治療費を負担してくれることになる。「紙ナプキン」に内定書を走り書きして契約書を交わし、'01年にスペインへ渡ったのは有名な話だ。メッシは幼少期を語る際、しばしば母親や兄弟との別れの辛さを口にしている。

 「神の子」ディエゴ・マラドーナとの比較をよくされるが、内面は大きく違う。短気で薬物を濫用し制御不能なマラドーナに対し、メッシはとても地味な性格だ。

 ただし、ピッチ上ではすぐ口を尖らせ、不機嫌になり、まれに嘔吐していた。嘔吐をすることについて、メッシは「何を食べたかわからないが、長年ひどい食生活を送っていた。不健康な飲み物やスナックを絶つことが(試合中の嘔吐をなくすための)本当の鍵だった」(米国オンラインニュースサイト「TheSportingNews」2018年3月20日)と語っている。すでに「嘔吐癖」は克服したようだが、一般のトップアスリートと比較して恵まれていない身体を持っていることは間違いない。

■身長差を武器に

 現在、メッシの身長は169cmだ。治療当時の150cmよりも背は伸びたものの、不利であることは想像に難くない。例えば、2018年のW杯でのアルゼンチン代表の平均身長は178.9cm、日本は178.8cm、ドイツは185.8cmだ。小柄の部類であることがよくわかる。しかし、それが「メッシにとって」デメリットかというと、全く違うようだ。

 FCバルセロナのメソッド(強化・育成)部門責任者であるパコ・セイルーロは、AmazonPrimeビデオ「ThisIsFootball」のシーズン6で、メッシについて以下のように分析している。

 「メッシを研究してわかったことがある。走行距離は全選手中最低で、スプリントの数も最低だった。ボールに絡む回数も一番少ない。しかし、メッシは、実に効率がいい。ボールを追ってないように見えるが、彼の存在がボールの行方に影響を与えている。ゴールへの道筋が見えたら、はじめてボールを受ける。(中略)背が小さいと、重心が低くなり、ボールを奪われにくくなる」

 つまり、体力のなさを効率的な動きでカバーし、背が小さいという本来であれば欠点にもなりそうな身体的特徴によって、重心の低いドリブルを実現している。

 また、小柄であることが驚異的なステップ数を生み出していることも判明した。ボールが足にくっついているようだ、としばしば形容されるメッシのボールキープ力の源泉は、相手の3倍もの細かいステップにある。

 体格が大きなDFが大きく一歩を踏み出している間に、メッシは3回の方向転換のチャンスを得ているということだ。メッシのドリブルの特徴のひとつは、相手が身体を入れてボールを奪おうとすると、ドリブルを突然止めることにある。それはボールを止めることで、DFとの距離をつくり(パニックに陥らせ)、そこでも細かいステップを使って相手を抜いてしまうのだ。

■クロアチア戦後のコメントとは

 ここからはメッシの輝かしい記録を簡単に振り返ってみよう。

 2004年、17歳のメッシはバルセロナで最初の出場を果たす。これは当時の最年少記録である。

 2005年、18歳でアルゼンチン代表デビューを果たす。ただし、デビュー後2分で、退場の憂き目にあう。

 2006年、アルゼンチン代表としてワールドカップに出場。大会史上6番目の若さで初ゴールを奪う。

 2009年、チャンピオンズリーグ優勝。大会の得点王になる。バルサを1シーズンで3つのトロフィーに導き、バロンドール(世界年間最優秀選手)を受賞する。

 2011年、米タイム誌が「世界で最も影響力のある人物」に選出(2年連続)。

 2012年、24歳で91得点を挙げ、バルセロナの得点記録を更新した。

 2014年、ワールドカップ決勝でアルゼンチンがドイツに敗れる。7ゴールで大会最優秀選手に贈られるゴールデンボール賞を受賞。

 2018年、チャンピオンズリーグで、100ゴールを達成。

 2021年、コパ・アメリカで優勝。

 2022年、アルゼンチン代表としてディエゴ・マラドーナの持つワールドカップ出場記録を超え、 ワールドカップ5大会でアシストを記録した初の選手となる。

 メッシは、準決勝のクロアチア戦に3-0と大勝したあと、「この決勝戦でプレーすることで、私のワールドカップの旅を終えることができることを誇りに思います。体験していることが刺激的なんです。日曜日が僕のワールドカップ最後の試合になるだろう」と述べた。「生きる伝説」という称号がふさわしい彼をW杯の舞台で見られるのは、次の決勝戦が最後ということになる。

■真価はゴールではない

 テレビのサッカー解説者は、ディフェンダーからボールを奪おうとするFWが積極的に追い回すことを賞賛しがちだ。一方、メッシはただ歩いているだけ。ほとんどボールを追い回そうとしていない。

 ハイライトシーンでは、メッシは恐ろしいスピードで動き回っていることも多いが、試合を全部観ていると、ほとんどのシーンで歩いている。その分、他のチームメイトがメッシの分までディフェンスをしていることも多い。こうした状況はチームにとって、不利になっていないのだろうか。

 メッシを見出したペップ・グアルディオラ(2008~2012年にメッシが所属したバルセロナの監督)は、こう解説する。

 「メッシは周りを見ている。私は歩いてピッチを観察するメッシが好きだ。頭を左右に動かして試合に参加しているんだ。メッシは状況をきちんと把握している。メッシは頭を常に動かしてる。走っていない状況でも観察しているんだ。ディフェンスの弱点を探している。試合開始5分から10分後には(頭の中にゴールまでの)地図が描けている。メッシは目と脳でピッチ上の空間を正確に把握しているんだよ。ジャングルで生き残る獣みたいに」

 メッシはピッチでひとり歩きながら、ゴールへ至る戦略を練っているのだ。メッシの偉大さを語るデータもある。さまざまなスポーツをデータで分析する専門会社「Stats Perform」によれば、メッシは10年以上にわたり、世界のトップFWによるゴール平均獲得数を28%上回り続けたのだという。つまり世界を代表するFWにボールを渡すより、メッシにシュートを打たせた方が28%の確率でゴール数が増えるということだ。このスコアはサッカー史上最も偉大な数字だという。

 ペップ・グアルディオラは言う。

 「人はメッシについて語るとき、こういったゴール(コントロールされた正確なシュート)を語りがちだ。しかし、彼のすごさは、正確にコントロールされた完璧なパスにあるんだ。試合を理解している。どんな状況でも正しい判断を下す。いつでも彼の判断は正しい。(ゴールに迫る)パスを出せる選手は世界中に多くいるが、メッシは誰よりも多く、そのパスを出せる」(出典:AmazonPrimeビデオ「ThisIsFootball」シーズン6)

 しかし「Stats Perform」によれば、そんなメッシであっても70%以上はフィニッシュが決まっていないというから、やはり決勝戦は時の運もあるということだろう。決勝戦は、これでW杯が最後となるメッシから目が離せない。(文中敬称略)

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✅ わかりやすい文章を有難うございました。
メッシがいかに凄いか、よく理解できました。

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