新浪氏 最低賃金払えない企業駄目
✍️記事要約
最低賃金の引き上げ目標を巡り、中小企業への影響が指摘されるなか、経済同友会の新浪代表は、引き上げで倒産するような企業は、「守ってはいけない」と主張しました。
石破総理が掲げる、最低賃金を2020年代に1500円とする目標に対して、経済同友会はさらに早い、3年以内に1500円を要望しています。
一方、日本商工会議所は急な引き上げに対して、地方の中小企業の経営が悪化し、倒産しかねないと懸念を示しています。
経済同友会 新浪剛史代表幹事
「(最低賃金1500円を)払えない企業は駄目なんです。払えることを目標としてやっていくべき。1500円にしないということはある意味、駄目な企業を補助することになる」
新浪代表幹事は、最低賃金が払えずに倒産する中小企業は、「合従連衡すればいい」としたうえで、人手不足を背景に従業員は別の会社に移ることで、むしろ「生活レベルが上がる」と指摘しました。
雇用の受け皿がある今がチャンスとして「最低賃金を世界レベルに上げていかないといけない」と訴えました。
また、大企業こそ、中小企業が賃上げの原資を確保できるよう価格転嫁の適正化などで「ちゃんと応援しないといけない」と強調しました。
■英訳
Amid concerns about the impact of raising the minimum wage on small and medium-sized businesses, Tsuyoshi Shinano, the leader of the Japan Association of Corporate Executives, argued that companies that would go bankrupt due to a wage increase “should not be protected.”
In response to Prime Minister Ishiba’s goal of raising the minimum wage to 1,500 yen by the 2020s, the Japan Association of Corporate Executives is pushing for an even faster timeline, requesting that the 1,500-yen target be achieved within three years.
On the other hand, the Japan Chamber of Commerce and Industry has expressed concerns that a rapid increase could worsen the financial condition of small businesses in rural areas, potentially leading to bankruptcies.
Tsuyoshi Shinano, Representative Director of the Japan Association of Corporate Executives, stated:
“Companies that cannot pay a 1,500-yen minimum wage are not viable. The goal should be to enable them to pay that amount. Failing to raise the minimum wage to 1,500 yen would, in a sense, be subsidizing failing businesses.”
Shinano further pointed out that small businesses that cannot pay the minimum wage should “consolidate or merge,” and with labor shortages, employees can move to other companies, potentially improving their standard of living.
He emphasized that now is the opportunity, as there are job openings, to raise the minimum wage to a global level.
Shinano also stressed that large companies must “properly support” small businesses in securing funds for wage increases by ensuring fair price adjustments.
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働き手の生活環境を改善させるためにも最低賃金引き上げは重要だが、2020年代までに時給1500円の達成を目指すなど、引き上げのスピードが速すぎることが問題なのではないか。
高度経済成長期並みの年率7.3%というありえないスピードで最低賃金を引き上げていけば、大企業と下請け関係にあって立場が弱く、価格転嫁が難しい中小企業は、人件費負担の増加でたちまち経営が行き詰まり、倒産や廃業が相次ぐことになるだろう。
最低賃金を大幅に引き上げるのであれば、大企業に対して下請け事業者が適正な価格交渉・価格転嫁ができるような制度を整えることが先決ではないか。
✅ 最低賃金引き上げというのは、価格統制なので、ミクロ経済学的には悪手になる。それでも一定の合理性があるのは、過剰な中小企業対策をキャンセルする効果があるからである。民主主義の下で、政治家は選挙区に帰ると中小企業政策を地元の有力者から求められたりする。シャッター街対策などは、何度、行政事業レビューで廃止されてもゾンビのように復活する。
これは、ある種、民主主義のコストであって非効率であっても甘受すべきという議論がある。それは一理ある。
しかし、非効率な中小企業の新陳代謝が進まなければ産業構造の転換が進まない。さすがに低廉な労働力の供給に頼ってばかりの中小企業に変革を促す工夫は必要となろう。方法として、最低賃金の引き上げがいいのかどうかは議論の余地があるけれども。
✅ 最低賃金1500円の件は、厚労省の解説にある通り、都道府県別の適用労働者数(最低賃金が適用される労働者数)による加重平均を意味します。都道府県別で最低賃金は異なります。現在の最低賃金の全国平均1055円も、この加重平均で計算されています(「全国加重平均額」と表記)。
労働者数を労働力調査から就業者で勘案すると(非適用者は勘案せず)、全体では6764.9万人、東京都が一番多く837.9万人、ついで神奈川県507.6万人。最低賃金が一番低い秋田県は46.7万人で全体の0.7%。地方でも現行から引き上げられるでしょうが、一律1500円になるわけではないのです。
さらに「最低賃金1500円」は、選挙で話題に上る前は、むしろ某野党や労働団体などが「世界基準に合わせるため」と訴えていました。記憶に新しい人も多いでしょう。しかもこの訴えでは全国加重平均ですらなく、一律1500円を求めていました。