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給与と労働時間、どちらを優先? 日立とパナソニックの「週休3日」とは[2022.4.26]

給与と労働時間、どちらを優先? 日立とパナソニックの「週休3日」とは

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✍️記事要約

✅ 給与と労働時間、どちらを優先? 日立とパナソニックの「週休3日」は全く違う

連日「週休3日」が話題になっている。日立製作所とパナソニック ホールディングスが相次いで2022年度中の導入を検討していると発表したことがきっかけだ。しかし、日立とパナソニックの「週休3日」は全く異なるものだ。どういうことかというと……。

連日「週休3日」が話題になっている。日立製作所とパナソニック ホールディングスが相次いで2022年度中の導入を検討していると発表したことがきっかけだ。

 日立やパナソニック、そしてすでに制度を導入をしている塩野義製薬やヤフー、佐川急便などは「週休3日を選べる企業」として一緒くたに語られることがままあるが、企業によってその制度は全く異なる。特に日立とパナソニックの制度は対照的なため、比較すると両社の方針の違いが明確になる。

日立の週休3日制 ポイントは「給与維持」

 日立の週休3日制のポイントは「給与を維持する」ことだ。これまで1日3.75時間としていた1日の勤務時間の下限をなくし、日々の労働時間を臨機応変に調整して働ける制度とした。

ただ、月ごとの総労働時間は変わらない。週休3日で働きたい場合には、他の勤務日にその分長く働く必要がある。

 これは、自分の裁量で働きたい労働者に需要が大きい制度だ。給与が変わらず、仕事量やプライベートの予定に合わせてその都度働く時間を調節できる制度のため、気軽に活用しやすいのもメリットとなる。多くの社員を対象に、最も生産性の高い時間配分を自分で選んで働いてもらいたいという意図が感じられる。

 しかし、毎週週休3日を確保しようとすると、その他の曜日の勤務時間は約10時間となる。体力や時間に余裕がなければ続けられないだろう。

 またこの制度は、厳密には「選択的週休3日制」とは異なる。週休3日制という一つのコースが用意されているのではなく、制度の対象者が、自分の働き方を自己管理する中で、週休3日にもできるというものだ。

 これらを考えると、育児・介護や、副業、学び直しなどのために余裕のあるプライベート時間を確保したい人のニーズには必ずしも合致しない。もちろん時短勤務などと組み合わせて活用すれば解決できる可能性があるが、その際には「給与が下がる週休3日」となるだろう。

■ パナソニックの週休3日制 ポイントは「1日の労働時間維持」

 パナソニックの週休3日制のポイントは「1日の労働時間を維持する」ことだ。つまり、週休3日制を選択した場合、月間や年間の総労働時間は少なくなる。

一般にこうした制度を導入する場合、週の労働時間が5日から4日へと2割減少するのに比例して、給与も2割ほど減らす企業が多い。

 この点についてパナソニックは4月18日の説明会で「給与への影響は労使協議や社員個々への影響を含め、ていねいに検討していく」(三島茂樹執行役員)とし、詳しい方針は示さなかった。

同説明会によると、週休3日制の導入意図は社外副業や地域ボランティア、自己学習などに挑戦する時間の創出としている。つまり、余裕のあるプライベート時間を確保できるようにしている。

 一方、日立製作所の制度と比べるとメリットを享受できる人は多くないだろう。給与や評価・昇進などへの影響がなくならない限り、「選択的週休3日制」という他の社員よりも総労働時間が減るコースを選ぶ人は限定的だと考えられる。

■ 塩野義製薬やヤフー、ユニクロは?

現在、週休3日を選べる企業の中では、パナソニックと同じように「選択的週休3日制」の制度を設けている企業が多い。

 塩野義製薬、みずほフィナンシャルグループ、ヤフーなどが代表例だ。これらの企業は、総労働時間を減らすのに比例して、給与も減らして対応している。

 日立のように「給与を変えず、他の日に多く働く」ことで週休3日を選べる制度を導入した企業には、佐川急便やファーストリテイリング傘下のユニクロがある。佐川急便はドライバーが対象、ユニクロは転勤のない「地域正社員」が対象と、どちらも職種を限定し、その中での希望者のみに適用する形で実施している。

 なお、労働者の理想の週休3日は、言わずもがな「給与は維持し、総労働時間は減る」形式だろう。ベンチャー企業などではこの形式を採用している企業もあるが、全社員がその分パフォーマンスを向上して仕事に取り組むとは想定しづらく、人件費当たりの生産性の低下が懸念されるため、大手企業での導入は難しいと考えられる。

 週休3日の制度の詳細には、企業ごとの働き方改革の方向性が表れている。週休3日により、日立やパナソニックはどう変わるのか、これからどのような制度の企業が増え、どのような成果をもたらすのか──今後の動向を注視したい。

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