近づく第8波 政府に漂う焦燥感
✍️記事要約
新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が北海道や東北地方を中心に再び増加に転じ、政府が神経をとがらせている。
東京都でも1週間の平均値が前週比1・3倍に跳ね上がり、「第8波」の入り口に立ったとの見方もある。政府はオミクロン株に対応するワクチンの接種促進に力を入れる構えだが、一定数の国民が免疫を獲得するには時間がかかるため冬場の流行に間に合うか予断を許さない。
4日にあった都の会議では、2日時点の1週間当たりの新規感染者数が4306人で、10月26日時点の3305人から大幅増となったことが報告された。海外で主流になりつつある「BQ・1」や「XBB」などの新たな変異株の割合も増え始めており、会議メンバーは「今後の急激な増加に注意を払う必要がある」「屋内では気温が低い中でも定期的な換気を」と、次々に警戒感を示した。
秋が深まるにつれ、北日本では既にリバウンドが顕著になっている。北海道では2日時点で1週間当たりの新規感染者数が前週比1・42倍となり、東北6県でも同様の傾向に。寒さに伴って換気が不十分になりがちな上、そもそも呼吸器系の感染症ウイルスは冬季に流行しやすい特性もある。
九州は今のところ横ばいか微増程度で、福岡県の1週間平均値も2日時点で前週比約1・16倍と目立った兆候は見られない。ただ政府にコロナ対応を助言する専門家は「全国的な流行拡大が、より早期に始まる可能性がある」と指摘する。
インフルエンザとの同時流行も懸念される中、政府はオミクロン株対応ワクチンの接種率向上を急ぐ。経済活動を維持し、行動制限をできる限り回避したい政府としては、他に有効な手だてもなく、感染動向を静観するしかないのが実情。政府関係者は「とにかく接種率を上げ、『第8波』を迎え撃つしかない」と焦燥感すら漂わせる。
官邸が4日に公表したオミクロン株対応ワクチンの接種率は、3日時点で5・9%。「第7波」が一段落し、人々の間に気の緩みが出たり、最新の「BA・5」対応型を待っていたりして、加速していないとみられる。政府内では一時、接種者に特典を与える施策が検討されたものの、「接種できない人が不公平感を持つ」などと異論が出て、その後立ち消えになった。
「コロナが拡大すれば、内閣支持率を押し下げる要因がまた増えてしまう…」と首相周辺。ワクチンが先か、感染者増が先か-。官邸内で数字とのにらめっこが続く。