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「説明がヘタな人」が知らない話の組み立てのコツ[2022.1.9]

「説明がヘタな人」が知らない話の組み立てのコツ

【記事詳細】東洋経済ONLINE

✍️記事要約

✅ 「説明がヘタな人」が知らない話の組み立てのコツ
「結論から話す」でスベっていませんか?

「結論から話そう!」。そう、いわゆる「結論ファースト」と言われる話し方があるが、それは本当に正しいのか? むしろ、しっくりこなかった経験をしたことのある人も多いのではないだろうか。
元・カリスマ予備校講師で、現在、東京大学大学院で「認知科学」をベースとした研究も行う犬塚壮志氏によれば、「結論ファースト」で話し始めることで、逆効果になる場合もあるという。
ここでは、犬塚氏の新著『説明組み立て図鑑』から、説明の目的やシチュエーションに合わせた「組み立て方」をキーワードに、「結論ファースト」でうまくいかないケースやその理由について紹介する。

■なぜ、「結論ファースト」一辺倒の説明は失敗するのか

物事をわかりやすく伝えるための技法としてよく言われている「結論ファースト」。相手が知りたい結論から伝えるというこの「結論ファースト」ですが、結論から話してもうまく伝えられなかったという経験はないでしょうか?

「結論から話すと、〝そもそも、それ、何についての話?〟のように、上司や同僚によく言われてしまうんです……」

説明のスキルアップ研修に参加している受講生の方からこの手の相談をよく聞きます。この原因はどこにあるのでしょうか?

実は、この原因は、説明の目的やシチュエーションに合わない「組み立て方」をしてしまうことにあります。目的とは、「なぜ、説明を行うのか?」、「説明することで何を達成したいのか?」です。シチュエーションとは、制限時間や場所、説明相手の属性や持っている知識のことで、説明の「制約」と考えることができます。

こういった目的やシチュエーションを考慮しないままに、「とりあえず、結論から話そう」と安直に説明し始めてしまうことで、説明する本来の目的を達成できないことがあるのです。

例えば、冒頭の「それ、何についての話?」と聞き返されてしまうのは、相手と前提の情報共有ができていない可能性があります。結論ファーストは、「そもそも、何に関する話なのか?」のような、いわゆる「文脈」が理解されにくいのです。「文脈」とは、端的にいうと「説明している情報以外の知識」です。相手に知識が不足していたら、なおさらです。

また、当たり前ではあるのですが、話し手の自分と相手とでは持っている知識がまったく同じということはありえません。そのため、説明で用いている用語を相手が知らない可能性もあります。

だからこそ、説明の組み立て方は、つねに「結論ファースト」で伝わるとは限らないのです。

実は、「結論ファースト」がうまくいかないケースはまだまだあります。

■説明は、「目的」を達成できなければ意味がない

私自身は、大学受験の予備校講師として10年間登壇していました。そこでは、生徒に話の内容に興味を持ってもらえるような説明の仕方が必要不可欠でした。たとえば、あなたならどちらの話を聞いてみたいでしょうか?

A「糖類には、ゲンチオビースのような苦味のある物質もあります」
B「甘味がなくて、むしろ苦い味のする糖があるのって知ってた? ゲンチオビースって物質なんだ」
講師として登壇して間もない頃の私は、Aのような伝え方をしていました。「結論から簡潔に話すのが鉄則」という刷り込みがあったためです。

ただ、実際にAの伝え方で聞いている生徒側は、良くて「へぇ〜」くらいになる程度です。Aのような伝え方だと、聞く耳を持ってくれにくいのです。

これでは本末転倒だと思い、説明の組み立て方を変えて、あえて、「結論ファースト」ではないBのような伝え方をするようにしました。

少し遠回りをするフレーズを挟んだ程度ですが、たったこれだけので、生徒は「何、それ!?」と前のめりに話を聞くようになったのです。組み立て方をわずかに変えるだけで、相手の好奇心を刺激する説明にすることができるようになったのです。

また、予備校講師の最も重要な仕事の1つに、生徒が自力で入試の問題を解けるようになるための「スキル習得」を促す説明があります。問題の解き方を説明したうえで、そのスキルを習得させるためには、結論である使う公式や解答を先に示しても、実はうまくいかないことが多いのです。

「なぜ、その公式を使う必要があるのか?」、あえて結論ではない理由などから先に出すことで、解答にたどり着くプロセスを丁寧に追いながら、着想する経験を相手にさせることができます。

「結論ファースト」で結論を聞いてしまうと、そこまでに行きつく途中のプロセスを自分の頭で考えようとしなくなる危険があるのです。自分の頭で考え、それを身につけるためには、「結論ファースト」の説明は注意が必要です。「スキル習得」を促す目的での説明は、そのスキルを相手が再現できるようにならなければ意味がないからです。

そして、これまでにお話しした、説明の目的やシチュエーションに合わせた「組み立て方」は、実は、独立・起業後にも非常に役立ったのです。

■「結論ファースト」で苦汁を飲まされたことも

独立後にすると、最も苦労したのは、商談における「交渉」でした。収入が不安定な独立直後の私は、非常に弱い立場であったこともあり、交渉では何度も苦汁を飲まされました。自分が相手に提示した条件よりもよくなることはほぼ皆無でした。むしろ、足元を見られて、値切られることがほとんどでした。

こういった経験から学んだことは、交渉では、基本、「結論ファースト」はNGです。つまり、自分の望む条件を結論として先に提示してはいけないのです。交渉を有利に進めるために、望む条件(結論)はあえて先に出さず、相手には知らせないことが重要です。これは、交渉学の最高学府であるハーバード・ロー・スクールの教授であるロジャー・フィッシャー氏も同様のことを述べています。

商談などの交渉で重要なことは、自分と相手の「共通の利益」は何かをまず探っていくことです。「こちらが望む条件(結論)はこうです。以上」のような伝え方だと、条件のすり合わせや駆け引きも一切できず、そこで交渉が決裂してしまう可能性が高まります。そうなると、説明する目的が達成できず、本末転倒です。

相手が本来望んでいる条件を聞き出しつつ、自分の望む条件と照らし合わせながら「共通の利益」を見出し、最後に結論として提示するのがポイントです。

■目的が達成できるかどうかは、「組み立て方」が9割

「結論ファースト」ではうまくいかないケースにどうすべきかをまとめると、以下のようになります。

ケース① 文脈を伝える
ケース② 前提の情報(知識)を共有する
ケース③ 知的好奇心を刺激する
ケース④ 結論までのプロセスを、相手にも再現できるようにする
ケース⑤ 商談などの交渉で駆け引きしたり、有利になったりする
大事なことなので繰り返しますが、説明の目的やシチュエーション(制約)に合わせて効果を発揮する「組み立て方」は異なります。

だからこそ、ご自身がどのような目的で、どのようなシチュエーションのもとで説明を行うのかを明確にしたうえで、そのときに最適な順番に説明を組み立てることが重要です。説明の目的を達成できるかどうかは、「組み立て方」が9割といっても過言ではないでしょう。

最後に。あなたの情報を必要としている人がいます。あなたの情報を心待ちにしている人がいます。あなたの情報で人生が変わる人がいます。だからこそ、その情報を、説明の目的が達成できるような「組み立て方」をしてから届けてみてください。

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