4630万円誤送金を使い切った24歳男の“罪の重さ”とは
✍️記事要約
山口県阿武町が新型コロナウイルス対策の臨時特別給付金4630万円(463世帯分)を誤って振り込んだ問題で、振り込みを受けた無職、田口翔容疑者(24)が18日、県警に電子計算機使用詐欺容疑で逮捕された。異例の展開となった今回の逮捕劇だが、田口容疑者の刑罰はどの程度の重さになるのか、専門家に見解を聞いた。
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報道によると、田口容疑者は4月12日、自分名義の口座に町が入金した4630万円が誤りによるものだと知りながら、スマートフォンを操作して、オンライン決済で決済代行業者の口座に400万円を振り替えた疑いがある。
そもそも、「電子計算機使用詐欺」とはどのような罪なのか。
人を欺いて財物をだまし取る罪は詐欺罪に当たる。一方で電子計算機使用詐欺罪は、ATMや電子決済などで、コンピューターなどに虚偽情報や不正な指令を与えて不法な利益を得る罪のことだ。法定刑は詐欺罪と同じく10年以下の懲役となっている。
刑事裁判官の経験を持つ片田真志弁護士(古川・片田総合法律事務所)は、「例えば銀行窓口で同じ行為を行った場合は、人をだましたとして詐欺罪になります。今回はスマホ決裁を用いたことで電子計算機使用詐欺罪が適用されたことになります」と解説する。
果たして、田口容疑者はどの程度の刑事罰が待っているのか。
片田弁護士によると、どの程度の金額を返済できるか。また、町側に示談の余地があるかが焦点になるという。
「まったく返済できない場合、実刑となり懲役3年前後の判決がくだる可能性が高いと考えられます。一方で、全額返済した場合には執行猶予が付くことになるでしょうし、全額までいかなくても相当額を返済する内容で町側が示談に応じた場合は、執行猶予がつく可能性が出てきます」
そもそもは町側のミスが発端だが、情状に影響はするのか。
「たまたま財布を拾ってそのお金を使ってしまった場合と似ており、田口容疑者も最初から町から不正に金銭を得ようと計画していたのではありません。その点は、量刑に影響すると思います」
一部報道では、田口容疑者は振り込まれた金を「ネットカジノで全部使った」と供述したとされる。詐欺を働いた動機については量刑にどの程度影響するのか。
「例えば殺人罪の場合、介護による苦しみの末の犯行か、怨恨(えんこん)かで量刑は大きく変わってきます。ただ、財産犯はそれとは違い、動機が遊興目的でも仮に生活苦だったとしても、量刑への影響は限定的と考えられます」
片田弁護士は、今後の展開をこう予測する。
「例えば田口容疑者側から半額程度の返済による示談が提案されたとしても、全国的に大きく報道されていること、また、地方自治体である町側が容易には債権の一部放棄に応じないことを考えると、『半額程度で折り合いをつけ示談に応じる』ということは、町としてはしづらいのではないでしょうか」
田口容疑者の代理人は、返還方法について「(田口容疑者が)働いて返すしかない」と話しているというが、裁判にかかる費用も含め、市民の税金が戻ってくるかは依然として不透明だ。