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天心の転向 背景に尚弥の存在?[2021.4.23]

天心の転向 背景に尚弥の存在?


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✍️記事要約

✅ 那須川天心はなぜリスクをとってボクシング転向するのか… “井上尚弥の存在”とキックのルール変更が背景に?

キックボクシング界の若きスター、那須川天心がキックボクシングを引退し、ボクシングに転向すると宣言した。正確には2022年3月の試合を最後にキックボクサーとしての活動をやめて、以降はボクシングに専念するという。

 格闘技の“神童”とも称される22歳の那須川の決断はメディアやSNSで大きな話題となっている。那須川はボクシングでもスターになれるのか? その問いには正直なところ「分からない」としか言いようがない。たとえずば抜けた才能の持ち主でも、必ず結果が出るという保証はないのだ。これは歴史が証明している事実である。

天心にとってリスクのある“ボクシング転向”の決断

 そこで本稿ではデビューした後の話ではなく、那須川のような選手がなぜ生まれ、今回このような決断をしたのかに焦点を当てたい。既にキックボクシングでトップのポジションを獲得し、相応の評価を得ているのだから、ボクシング転向はかなりリスクがあるようにも思える。その背景にはいったい何があるのだろうか――。

 そうした疑問に答えようと、今回はとっておきの人物に登場してもらった。JB SPORTS BOXING GYMの山田武士トレーナーだ。山田トレーナーはボクシングの指導者として活動しながら、長年にわたりキックボクサーや総合格闘技選手の指導にもあたってきた。那須川やK-1王者からボクシングに転向した武居由樹が10代だったころ、彼らを指導した経験もある。ボクシング界の住人にして他のプロ格闘技にも詳しい稀有な存在と言えるだろう。

 そんな山田トレーナーが指摘する「背景」の1つがキックボクシングのルールの変化である。那須川や武居のようなボクシングでも十分に通用するであろうキックボクサーはキックのルール変更によって生まれたという。解説してもらおう。

「キックボクシングがボクシングに近づいていった」

「15年前、20年前のキックボクシングはパンチとキックだけでなく、首相撲、肘打ち、膝蹴りを使って試合をしました。だから試合中に組み合うシーンがけっこうあったんです。要はムエタイです。でも、そういった組み合いはテレビ的に面白くないということでルールを変えようということになりました。少しずつ変わっていった結果、今では“組んじゃダメ”が当たり前になりました。そうやって日本で行われているキックボクシングがどんどんボクシングに近づいていったんです」

 昔のキックボクシングはムエタイのようにゆったりしたリズムでキックを中心に試合が展開された。重心のかけ方は後ろ足に7、前足に3がセオリー。ボクシングは重心を体の中心に持ってくるのが基本で、となれば重心は後ろ足5、前足5ということになる。これだと頭の位置はキックに比べてかなり前に出る形となり、ディフェンスの仕方はだいぶ変わってくる。どっしり構えるキックに対し、フットワークが速いのもボクシングの特徴だ。

「キックの練習でボクシング練習をするのが当たり前」

 同じ“ボクシング”という名前がつく競技でもかつてはこれだけ違ったのだ。多くのキックボクサーがボクシングに舞台を移して成功しなかった理由がここにある。その根本が大きく変わった。

 山田トレーナーは続ける。

「ルールが変わっていってキックでもボクシング技術の重要性が高まりました。それでボクシングジムに通ったり、ボクシングのトレーナーに教わったりするキックボクサーが増えていったんです。天心や武居くんがキックを始めたころは、キックの練習でボクシング練習をするのがもう当たり前でした。だから彼らは小さいころからボクシングの練習を繰り返して、ボクシングに完全になじんでいる。キックのルール変更が彼らのような選手を生み出し、キックからボクシングに転向するハードルを下げたと言えますね」

“モンスター”井上尚弥が天心に与えた影響の大きさ

 確かに今のキックボクシングを見ていると、多くの選手がボクシングのような構えで、スピーディーに脚を動かしている。攻撃におけるパンチの重要性も増しているように思える。キックボクシングがかなりボクシング的になっているという指摘は説得力を感じさせる。

 それを裏付けるのが、逆もまた然りのパターンだ。かつてはキックからボクシングへの転向だけでなく、ボクシングからキックへの転向も失敗に終わるのが常だった。ところが最近は、プロボクシングで日本ランカーだった佐々木洵樹がキックボクシングに転向し、Krushという団体でチャンピオンに輝いた。佐々木に空手のバックボーンがあるとはいえ、彼の活躍はキックとボクシングの差異が少なくなった証の1つのように思える。

 さて、キックのルールの変化が那須川のような選手を生み出したことは分かった。では、転向のきっかけは何なのだろう。山田トレーナーが「一番デカイ」と口にしたのは井上尚弥の存在だ。そう、バンタム級で主要4団体のうち2団体のベルトを持つ、あの“モンスター”井上である。

“「『自分もああいうふうになれる』って感じたと思う」

「やっぱり井上選手の存在は大きいですよ。ラスベガスでメインを張って、軽量級の日本人選手でありながらアメリカのボクシング界でリスペクトされている。もちろんファイトマネーも高額です。ああいう選手は今までいなかった。井上選手って天心と体格もそんなに変わらない。だから天心は井上選手を見て『自分もああなりたい。ああいうふうになれる』って感じたと思うんですよ」

 かつてボクシングの世界チャンピオンはたとえ国内で有名になっても海外ではあまり知られない存在であることが多かった。だが現在はボクシング界もグローバル化が進み、インターネットを通じて情報は世界中に流れるようになった。海外で試合をする選手も増えた。その中で、井上は今までの日本人世界チャンピオンがなかなか手にできなかった、「世界で認められ、世界の中心で戦う」というポジションに到達したのだ。

「だから目指すのは井上選手のたどった道ですよ」

 モンスターは既に世界的に高い評価を受けているが、これからもう一段も二段もステージを上げる可能性を秘めている。海外でさらに試合を重ね、質の高いパフォーマンスを披露すれば、昨年10月の試合で手にした1億円というファイトマネーはさらに高騰し、海外での評価も一段と高まるに違いない。それこそが那須川がチャレンジに価値を見出した“ボクシング”である。山田トレーナーはそう考えている。

「海外で活躍し、海外で知名度を上げて、高額のファイトマネーを手にするというのはやはり魅力だと思います。国内でボクシングの世界チャンピオンになるだけだったら、天心にとって今の状態とそんなに変わらないと思うんですよ。既にボクシングの世界チャンピオン以上の知名度も、収入も得ているわけですから。だから目指すのは井上選手のたどった道ですよ。天心の方が年下ですけど、同じ時代にいたというのは縁でしょうね」

 もう1つ付け加えるなら、那須川がボクシングへ転向にあたり、帝拳プロモーションのバックアップを受けることも忘れてはならない。国内最大のプロモーターであり、世界との太いパイプを持つ帝拳のサポートを受けることは、那須川がボクシングで活躍していく上で大きな力となることだろう。

 キックボクシングのルール変更という環境の変化によってボクシング技術に長けた格闘技の神童が生まれた。そして今、井上の活躍に刺激されるかのようにボクシング転向を決意した。はたして那須川は大きな夢をつかむことができるのだろうか。那須川のボクシング人生がそのスタートから大きな注目を集めることは間違いない。

  ◇   ◇   ◇
☑️Wikipedia【那須川天心】

☘️ヤフコメ❗️ピックアップ☘️

✅天心のボクシングのレベルはかなり高い。バンタム級という体格だと世界チャンピオンも十分に狙えるだろう。
✅天心がボクシングを「やりたい」と決意、決断したんだから。それでいいんだよ。
✅規模の違いです。そりゃ世界の格闘技と言ったらボクシングです。世界的な称号が得たいんですよ。

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