優れたリーダーが密かにやっている雑談とは
【記事詳細】ダイヤモンドonline
✍️記事要約
管理職は「自分の力」ではなく、「メンバーの力」で結果を出すのが仕事。それはまるで「合気道」のようなものです。管理職自身は「力」を抜いて、メンバーに上手に「技」をかけて、彼らがうちに秘めている「力」を最大限に引き出す。そんな仕事ができる人だけが、リモート時代にも生き残る「課長2.0」へと進化できるのです。本連載では、ソフトバンクの元敏腕マネージャーとして知られる前田鎌利さんの最新刊『課長2.0』を抜粋しながら、これからの時代に管理職に求められる「思考法」「スタンス」「ノウハウ」をお伝えしていきます。
● 気軽に話しかけられる「存在」であることが大事
話しかけやすい存在か否か──。
これは、管理職として機能するかどうかを大きく左右するポイントです。メンバーにとって声をかけにくい存在だと思われていれば、ホウレンソウもなかなかしてくれませんし、こちらから話しかけても心を開いてくれません。それでは、マネジメントのしようがないからです。
そのために大切なのは「ステージゼロ」を大切にすることです。
「ステージゼロ」とは、具体的な仕事に入る前段階の、日常的な立ち居振る舞いやコミュニケーションのことを指す私の造語です。
頭の中でどんなに立派なマネジメント戦略を考えていたとしても、この「ステージゼロ」をないがしろにしていては、何も始まりません。日常的な立ち居振る舞いやコミュニケーションを大事にすることで、「話しかけやすい存在」になることこそが、優れたマネジメントを実現する第一歩なのです。
そのために、私は、管理職だった頃、いろいろな工夫をしていました。
例えば、自分のデスクの横に小さな椅子を置いていました。椅子を置くことで、メンバーに「いつでも自分の席に来て話しかけてもいいよ」というメッセージを送っていたのです。そして、メンバーが相談に来てくれたときには、自分の仕事の手を止めて、穏やかな気持ちでしっかりと向き合うように心がけていました。
もちろん、リモート環境下では、自分のそばに椅子を置いても意味はありません。そこで、メンバーがメールやチャットで話しかけてくれたときに、クイック・リスポンスを徹底することで、「椅子を置く」のと同じ効果を生み出すことができるでしょう。いつチャットを投げても、管理職からすぐに返事が返ってくれば、メンバーは「いつでも話しかけていいんだ」と思ってくれるはずだからです。
注意したいのは、テキストによるコミュニケーションには、表情や声音という非言語的情報が抜け落ちてしまいますから、無機質で無愛想な印象をもたれがちということです。ですから、事務的な内容であったとしても、文末に「!」と入れることでポジティブな印象を与えたり、絵文字なども使って「気持ち」を表現することを心がけたほうがいいでしょう。
重要なのは、メンバーが話しかけてくれることを「歓迎」する気持ちを毎回伝えることです。そして、メンバーに「この管理職に話しかけても、不愉快な気持ちにされない」「この管理職に話しかけると、ポジティブな気持ちになれる」といった感覚をもってもらうことができれば、メンバーとの距離は自然と近づいていくはずです。
● メンバーに「関心」をもてば、 自然と関係性がつくられていく
また、私が心がけていたのは、自分から話しかけることでした。
職場を歩くときに、あえていろいろな通路を歩くようにして、まんべんなくメンバーに話しかけるようにしていたのです。
もちろん、かしこまって話しかけるのではありません。そんなことをすると、「業務の進捗確認かな?」などと警戒されるだけですから、軽い感じで、ほんの一言二言、言葉を交わすだけにとどめます。ほんの一瞬の雑談ですから、「忙しそうだから、話しかけると迷惑かな……」といった遠慮も不要です。
そんなことをしていたら、いつまでたっても話しかけることができなくなってしまうだけ。そういう遠慮は、チームのためにも、自分やメンバーのためにも百害あって一利なしです。そのためにも、手短かに雑談を終えることを徹底すべきなのです。
ここで活きたのが、飛び込み営業をしていた頃の経験です。
ある会社を訪問したときには、素早くちょっとした変化を見つけて、それを糸口に会話を始める必要があったからです。同じ要領で、メンバーのちょっと変化を見つけて、それに軽く触れてあげるのです。
例えば、デスクにお気に入りのマスコットを置いているメンバーがいれば、「あれ、なんか新しいマスコット増えたね」などと声をかける。髪の毛を切ったメンバーがいれば、「雰囲気変わったね」と声をかけて、「そうなんですよー」と返ってきたら、「すごいいい感じだよ」とニッコリ笑って立ち去る。そんな感じでいいのです。
大事なのは、一人ひとりのメンバーに対して、分け隔てなく関心をもつことです。それを意識していれば、変化が目に入ってきます。それを言葉にして伝えるだけで、メンバーとの関係性には変化が生じます。
いわば、心配りです。慣れないうちは、ぎこちない声がけになってしまうかもしれませんが、メンバー一人ひとりを気にかけることを習慣にすることができれば、自然に声がけができるようになります。
そして、メンバーにも、「この管理職は、自分のことを見てくれている」「自分のことを受け入れてくれている」と思ってもらえるようになり、なんとなく向こうからも心理的距離を近づけようとしてくれるようになるのです。
● リモート環境下で広がる 「疑心暗鬼」に敏感であれ
問題なのは、リモート環境下では、この「ちょっとした雑談」「ちょっとした触れ合い」が失われることです。
もしかすると、ささいな問題と思う人もいるかもしれませんが、これがマネジメントに及ぼすダメージは想像以上に大きいと考えるべきです。というのは、リモート環境下ではメンバーの多くが疑心暗鬼に陥る可能性が高いからです。
例えば、あるメンバーがなんらかのミスを犯したとします。そして、すぐに管理職に報告のうえ、しかるべき対応策を講じて、トラブル・シューティングに成功。管理職は、ミスの再発防止のために必要な指摘をしたうえで、「問題は解決したから、これ以上、このことは気にせず、次の仕事に集中してください」などと、本心からポジティブなメッセージを伝えたとしましょう。
しかし、こうしたコミュニケーションをオンライン上で行うだけでは、心の底から安心できるメンバーは少ないはずです。「上司は口ではそう言うけれど、本心では自分に対する評価を下げてるに違いない」という疑心暗鬼が首をもたげるからです。
私自身、若かった頃はそうでした。
上司と二人でいるときに、どんなに「失敗を気にするな」と優しい言葉をかけられても、それだけで安心することはできませんでした。
それよりも、他のメンバーもいる職場で、それまでと変わりなく、上司に笑顔で声をかけてもらえて、それを周りも温かく見守ってくれることのほうが重要な意味をもちました。上司だけではなく他のメンバーの表情、声音、雰囲気、言葉から、身体全体で「大丈夫だよ」というメッセージを受け取ることが大切なのです。「リアル」に勝るコミュニケーションはないと言ってもいいでしょう。
● 「まだらリモートワーク」は、 チーム内に分断を生み出す
ところが、リモート環境下では、こうした「ちょっとした雑談」がもたらしてくれる大きな恩恵が失われてしまいます。それがマネジメントにもたらすダメージはかなり大きいので、リモート環境下において、いかにこのダメージを小さくするかをよく考えたほうがいいと、私は思っています。
第一に考えられるのは、リアルワークとリモートワークの併用です。
仕事そのものはリモートワークだけでも回せる業種・職種であったとしても、それだけに振り切ってしまうと、メンバーとの信頼関係の基盤をつくる「ステージゼロ」がほぼ完全に失われてしまいます。だから、あえて出社する機会を設けて、人為的に「ステージゼロ」の場を設定するわけです。これは、最もシンプルな解決策だと言えます。
ただし、「まだらテレワーク」状態になることには注意をしたほうがよさそうです。
「まだらテレワーク」とは、パーソル総合研究所執行役員の髙橋豊氏が『テレワーク時代のマネジメントの教科書』(ダイヤモンド社)で用いた言葉で、「出社組とテレワーク組が混在している状況」を指します。
そして、髙橋氏は、同研究所の調査結果を踏まえて「『まだらテレワーク』は『全員テレワーク』の場合よりも、孤独感や不安が増大しやすく、マネジメントが難しくなる可能性があります」と指摘。その理由について、「出社組の間でスピーディに物事が決められたり、同じ会議に出席していてもリアルで出席しているメンバーのみが盛り上がったり……と、テレワーカーが置いてきぼりになってしまう事態が頻発する」からだと推測しています。
これは、非常に説得力のある推測だと思います。
そして、管理職は、チーム内でこのような分断を生み出さないような工夫をする必要があると思います。
例えば、出社するか、自宅勤務するかを、完全にメンバーの自由に任せるのではなく、週に1~2回は、全員が出社する時間帯を決めるといいでしょう。「定例会議の日は全員出社」というルールを設けてもいいかもしれません。普段は「まだらテレワーク」を認めたとしても、定期的に全員がリアルに顔を合わせる機会を設けることで、分断を緩和することは可能だと考えられます。
● オンライン上で「雑談ができる状態」をつくる
もう一つ、妙案があります。
これは、ある企業の現役管理職が実際に行っている取り組みです。そのチームでは、リモートワークを基本としていますが、週に1~2回、2~3時間にわたって、メンバー全員がWeb会議ツールに繋いだ状態で、それぞれの仕事を進めるのです。疑似的な形ではありますが、全員が顔を見合わせながら仕事をする時間を設けるということです。
もちろん、管理職がメンバーを監視するようなことをするのではなく、むしろ、ちょっとした雑談を挟みながら、リラックスした状態で働けるように配慮します。こうした場で、管理職が一人ひとりに冗談混じりで声がけをしたり、メンバー同士が情報交換をしたり、雑談で盛り上がったりするわけです。管理職と一対一でホウレンソウがしたい人がいれば、二人でクローズド・ルームに入って話し合うこともできます。
また、この時間帯に全員で「オンライン・ランチ」を一緒にとることも有効です。例えば、午前10時から12時までは仕事をして、12時から13時まではランチをとるわけです。
「オンライン飲み会」でメンバー間の交流を図ることもできますが、子育て中のメンバーやお酒が好きではないメンバーにとっては、それが負担になることもあります。しかも、「オンライン飲み会」の場合には、「もうすぐ終電だから、これで失礼します」と、途中で抜けることも難しいという難点もあります。
一方、「オンライン・ランチ」には、そのような問題が少ないため、リモート環境下でもチームワークを維持するのに適しています。ぜひ、みなさんのチームでも試していただきたいと思います。
もっと簡単な方法もあります。
例えば、定例会議が始まる30分前には、管理職がWeb会議アプリを立ち上げていることをアナウンスして、自由参加による「雑談タイム」を設けるのもいいでしょう。あるいは、定例会議の開始5分前には必ず全員がWeb会議アプリに繋げるルールにして、その5分間で会議に向けてウォーミングアップのために「雑談」する手もあります。
ともあれ、リモート環境下では、メンバーとの信頼関係を築き、チームワークを育てるために不可欠な「ステージゼロ」の場を意図的に作り出す必要があります。一見、仕事の生産性とは無関係に見える、このような取り組みこそが、長期的にはマネジメントの成否を大きく左右することになるのです(詳しくは『課長2.0』をご参照ください)。
◇ ◇ ◇
☘️ヤフコメ❗️ピックアップ☘️
✅ 発生した障害を報告すると解決策を一緒に考えるどころか「お前、どうすんねん」に始まり、次の報告で「全然理解できん、やり直し」とエンドレスモードに突入して、発生した障害を更に重くして返す上司、いたなあ。結局、部下から何も報告をしてもらえなくなり、組織は隠蔽体質まっしぐら。別の部署に飛ばされたけど、今では反面教師として、とても役に立ってくれた上司だったなあ。
✅ 大事なのは信頼関係。それが無い間は自分の殻を割ろうとはしません。先ずは頼れる姿を見せること。あと大事なのは上司からマメに声を掛けること。上司って「何かあったら相談して」というが、部下からは正直声をかけにくいのが本音。