500万円をインデックスファンドに突っ込み「絶望」した理由
✍️記事要約
友人が投資で儲けているのを見て、55歳にして初めて日経平均のインデックスファンドを購入した出版社勤務の男性・Nさん。最初こそ少し儲けが出ていましたが、調子に乗ってキッチンのリフォーム代として貯めておいた500万円を、妻に内緒で同じくインデックスファンドに投じたあたりから雲行きが怪しくなります。日経平均は徐々に下がっていったのです。
下がり続ける相場に後悔する毎日を過ごしたのち、ようやく反発したところで、投資信託は4ヵ月で手放しました。結果的には収益はトントンにあと一息というところで収まり、Nさんは傷が浅いうちに投資から足を洗えたことに、胸をなでおろしました。
もしもNさんが退職金を手にしてから投資をしていたら、もっと大きな損失を抱え、傷が深かったことでしょう。軽い火傷で済んだことは、いい教訓になりました。さてNさんの失敗の原因は、どこにあったのでしょうか。
●使う予定のあるお金で投資をした
一番の失敗は、妻との約束であるリフォーム資金に手を付けたこと。
直近で使う予定のあるお金を投資に回すことは、下落時に精神的に耐えられなくなる原因です。
また投資は変動がつきもので、明日の株価が上がるか下がるかは誰にも予想できません。短期のリターンを期待しすぎて、2~3年のうちに使うようなお金を投資に回してしまうと、相場の回復まで待てず、結果的にリターンを逃してしまいます。
●相場が下がり続けるときの恐怖や、値下がりすることの痛みを甘く見ていた
数十万円の損失であれば大したことはなかったと思うかもしれませんが、じわじわ、ダラダラと下がり続ける相場と付き合うには想像以上の精神力が必要です。後からみれば意外と相場の底はすぐにやってきたと分かったとしても、その渦中にいる時は、どこまでマイナスが膨らむのか気が気ではありません。
●投資しているもののリスクについて理解できていなかった
わずかな成功体験をもとに、本来どの程度の値動きがある投資商品なのかをよく考えずに投資額を増やしていったのも間違いのもとです。人間は都合の良い情報だけが耳に入る生き物ですから、周りがやっているから、ネットで成功談を目にしたから…といった理由で投資を始めるのは危険です。
■ 同じ失敗をしないためにするべきこと
同じような失敗をしないためには、ファイナンシャル・プランニングに基づいた資産運用が大切です。その要点をご紹介します。
(1)お金の色分け
現役世代の方からのご相談で多いのは、「とにかく運用を始めたい」「NISAかiDeCoを使わないと損」「周りもやっている」といった理由から入るケースです。
資産運用をフライトに例えてみると、目標、目的を定めずに投資をすることは、目的地のないフライトのようなもので、その揺れに耐えられません。
私がアドバイスする際には、まずは目的と手段を明確にするところを、しっかりとお伝えしています。たとえば最初のステップとして、預金で持つべきお金と、値動きを背負って運用するお金の仕分けを行ってみてください。
・預金:いざとう言う時に備える→生活費の6ヵ月程度
・預金:使う予定のあるお金の確保→2~3年以内に使う予定
・運用:非課税制度を活用(NISA・401K等)
・運用:将来へ向けて運用(特定口座)
(2)ライフプラン表やキャッシュフロー表の作成
ライフプラン表は横軸に年度、縦軸にご自身や家族の年齢を記入し、時間の経過によるライフイベント(一般的には住宅購入、出産、子供の卒入学、ご自身の退職など)を記入していきます。これにより、まとまったお金がでていく時期や貯め時が「見える化」されます。
ライフプラン表に毎年の収入や支出の情報を加えて、収支の状況や資産の推移を見える化した表が、キャッシュフロー表です。支出を記入することで自分の生活費のサイズが分かりますし、年金など退職後に入ってくるお金も整理できます。資産の推移がイメージできるので、むやみに老後不安を覚えずに済むようになりますし、投資の目的も決めやすくなります。
Nさんのように50代の場合は、資産を貯めるステージから取り崩しのステージへ移行していく準備が必要です。退職時期や退職金の額、年金をいつから受給するかなど、複雑な課題が待ち構えています。登山でも登りより下山でのケガが多いように、資産を貯めて増やすよりも、取り崩していくことのほうが難しいものです。
今はインターネットで検索すれば、ライフプラン表やキャッシュフロー表がダウンロードできますのでご自身で作成することも可能です。
■リスクと上手に付き合って長期的な資産運用を
(3)投資商品の値動きの幅を理解する(リスクを知る)
「期待リターン」とは投資家がある資産について、将来にわたる運用から得ることが期待できる平均的なリターンをいいます。一方「リスク」とは「リターンの振れ幅」のことです。よくリスク=「危険」と思いがちですが、投資でいう「リスク」はお金が増えることもあれば損をする場合もあることを意味しています。「リスク」と「リターン」は表裏一体なので、ハイリスクであればハイリターンが期待できます。ローリスクであればリターンも小さくなります。
自分の投資している金融商品の値動きを知ることは、運転している車の速度を知ることと同じようなことです。家族を乗せて安全運転していると思っていたら、時速150kmで走行していたというようなことが、投資でも起きがちです。
特に周りがやっているからという理由で投資を始め、投資の人気ブロガーだけを参考にしたり、売れ筋ランキングで見たままに投資商品を選択したりした場合、その値動きの幅がどれくらいなのかを想定できていない、つまりリスクを把握していない場合も多いです。そうした場合はNさんのように損失が出ると狼狽し、想定したリターンを得る前に手放してしまうことに繋がります。
少し細かい話になりますが、投資ではその資産クラス(投資対象となる資産の種類や分類)ごとに「期待リターン」と「リスク」が算出されています。
例えば日本の年金を運用しているGPIFの資料(*)では、国内株式の期待リターンは5.6%、リスクは23.14%とあり、年間最大損失の目安は40.68%です。(*出所:年金積立金管理運用独立行政法人「2020年度 業務概況書」P.35)
この数字の意味するところは、下がる場合は半値近くにまで値下がりする可能性があるということです。これを知っていて投資するのと知らないで投資するのでは、相場が大きく動いた時、特に下落時の気の持ち方が違ってきます。
投資金額は大きくなればなるほど、どれくらいのリスクを許容出来るか=「リスク許容度」の把握が肝になります。
またリスクの話はどうしてもイメージだけの話になりがちですが、パーセントではなく金額で考えるということも大切です。例えば私はセミナーで、1000万円投資をした場合、いくらの損失まで耐えられますか? という質問をしています。
・10%の下落に耐えられる つまり100万円の損失に耐えられる
・30%の下落に耐えられる つまり300万円の損失に耐えられる
・50%の下落に耐えられる つまり500万円の損失に耐えられる
何%の下落まで耐えられるかではなく、具体的な金額、例えば200万円下がったら耐えられるかと自分に問いかけて想像していただくと、より現実味が増すかと思います。Nさんの場合も、投資額が大きくなった分、下落のインパクトも大きくなったわけです。
(4)感情のコントロールも大切
リスクについてもう一つお伝えしたいことは、Nさんと同様、人は自分が思っている以上に損することへの恐怖を感じるということです。行動経済学で2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン氏は、「利益による喜び」より「損失による痛み」のほうが2倍以上も大きいことを実証し、プロスペクト理論としてまとめました。
人間は自分が想像している以上に、お金を失うことの痛みや恐怖が強いのです。100万円の損失なら耐えられると考えていた場合も、実際はその2倍の痛みを感じるとするならば、損失は50万円程度までに収まるような運用を目指したほうが安心です。特に投資初心者の方が値動きに慣れないうちは、心に留めていただきたいと思います。
■ Nさんのその後
今回のような失敗で投資は懲り懲りと距離を置く人が多い中、「失敗は成功の元、仕切り直してもう一度無理のないやり方で投資したい」と、傷が浅いうちにNさんが私たちアドバイザーのもとに相談に来ていただいたのは、幸いでした。
退職金を手にする前に投資の失敗や怖さも経験され、現在は短期的な投資ではなく、老後に向けた資産運用をスタートさせています。今回は奥様にもきちんと共有し、二人でどんな老後を迎えたいか、子供が結婚したらどのような援助をしたいかなども、話し合っています。積立で徐々に投資額を増やし、値動きに慣れることを実践中です。
かつてのように退職金を預けておけば金利で生活ができるようなリタイヤ生活は夢のまた夢になりました。平均寿命も延び、退職してからの人生も20年、30年を想定する必要があります。怖いから投資に手を出さないというのはもったいないことですが、友人の話を聞いて投資を始めて、一度や二度の値上がりを経験して投資額を一気に上げてしまうことも危険です。
投資に関する情報は世の中にあふれていますが、一般論ではなく自分のライフプランや価値観、資産の余裕度、投資経験などに基づいて、自分に合った資産運用をしていくことが長続きする秘訣です。
とはいえ日々仕事や子育てをしながら、自分で投資の勉强をすることは難しい方も多いでしょう。多くの人にとって投資は将来を充実させるための手段ですから、そこに時間や労力を割くのはもったいないと考える方もいらっしゃいます。
そういった方は、資産運用のアウトソーシングだと考えて、ファイナンシャル・アドバイザーの活用も検討してみてください。その際には、商品の提案だけをしてくるアドバイザーは避け、ライフプランに基づいた運用を支援してもらえるかどうかを確認しましょう。
☘️ヤフコメ❗️ピックアップ☘️
ですから、米国株と日本株のチャートを重ね合わせて比べれば、ワニの口の様に差が広がります。インデックス投資だから安心と言うわけではありません。投資には資金管理が重要です。使う予定のない金でインデックス投資をしてれば問題ないですが、子供の教育資金やリフォーム資金を使って投資して、いざ、お金が必要になった時に、含み損を抱えたインデックス投信を売らざるをえなくなるのだからね。投資はくれぐれも余裕資金で!
✅ 投資っていろいろな論点がありますが 私は「慣れ」ってとても大切だと感じます マーケットの荒波を経験しながら マーケットに参加し続けることが大事だと最近思います 健やかなる時も 病める時も 私はVTIと添いとげますw
✅ 初心者は少し含み益がでたら天にも昇る心地になり、少し含み益を抱えれば地獄の苦しみに感じるんだよね。(笑)私は20年近く全世界インデックス買い続けてるけど、おおよそ5年おきに「〇〇ショック」が発生して、そのたびに最大35%ぐらいは暴落するんだよね。でも必ず1、2年で戻って、その後は高値更新ってパターンです。(リーマンだけは4年掛かったけど)長期では全世界インデックスは必ず右肩上がりなんだから、買い続けるのみです。暴落時に狼狽して手放すなんて愚の骨頂です。