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マスターズ覇者シェフラーが松山の名前を出した理由[2022.4.12]

マスターズ覇者シェフラーが松山の名前を出した理由

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✍️記事要約

✅ マスターズ制覇のシェフラー(25歳)が真っ先に「ヒデキ」の名を口にした理由…オーガスタで語り継がれる“陰の立役者たち”

今年のマスターズ開幕前、昨年大会を振り返る映像が米ゴルフ界のあちらこちらで紹介されていた。

 4月になり、華やかなマスターズ・ウィークが始まったときも、いざ大会が始まってからも、「去年のマスターズは、こんな大会だった」と人々に思い出してもらうための絵柄の主役は、当然ながら、昨年覇者の松山英樹だった。

 18番グリーン上でウイニングパットを沈めた直後の松山。早藤将太キャディと抱き合い、勝利の実感を確かめ合った松山。グリーンジャケットを羽織り、万歳のように両手を挙げて悲願成就を喜んだ瞬間の松山。

 そうした「振り返り映像」には、大きな話題になった早藤キャディのお辞儀シーンも、必ず含まれていた。

■語り継がれる松山と早藤キャディの優勝物語

 昨年の優勝会見で、松山が自身を支えてくれた「チーム松山」への感謝をたくさん語ったことが、あらためて思い出される。日ごろは自身のことも身内のこともあまり語りたがらない彼が、あのときだけは饒舌だった。

 選手一人の力だけでは、マスターズ制覇は成し遂げられない。選手の陰でひっそりと、しかし献身的に、選手を支えるチームの存在なくして、マスターズ優勝は達成されない。

「支える」の意味は、ときに技術面を支えることだったり、用具面のサポートだったり、過去の優勝者から送られた激励の手紙だったりもする。

 どんな形であれ、どんな内容であれ、「支えること」「支えられること」がどれほど勝敗を左右するかを、オーガスタ・ナショナルのパトロンも世界中のゴルフファンも、みな、よく知っている。

 昨年大会の早藤キャディのお辞儀シーンは、松山を支え、勝利に導いた「陰の立役者」の在り方を自ずと表現していたからこそ、人々の心を捉え、大きな話題になったのだろう。

 そして、早藤キャディの存在とお辞儀シーンのエピソードは、松山の優勝物語の重要な一幕として、後世まで語り継がれる。

 マスターズの歴史を遡れば、チャンピオンの優勝秘話には、必ず、そんな「支える人々」の逸話がある。

 今年のマスターズ勝者、スコッティ・シェフラーにも、素晴らしき「支える人々」がいたからこそ、彼はグリーンジャケットを羽織ることができたのだろう。

 マスターズ・チャンピオンが最初にグリーンジャケットを羽織るのは、表彰式ではなく、クラブハウスの一角にあるバトラー・キャビンで行なわれる恒例の儀式だ。

 熱い戦いを終えたばかりのシェフラーは、初めて足を踏み入れたバトラー・キャビンの中に座り、その隣には、彼にグリーンジャケットを着せる役割を担っていた前年覇者の松山が座っていた。

 テレビカメラが回り始めると、シェフラーがすぐさま口にした言葉が、とても印象的だった。

「ヒデキはよく知っていると思う。最終日はとても長い。優勝するまでの時間は、とても長いんだ」

 人生で最も長く感じたその1日を乗り越えるためには、チームの支えが必要だった。何より支えが必要だった。その想いをともに知る松山にシェフラーは強い共感を覚えたからこそ、あの神聖なるセレモニーで、いきなり「ヒデキ」の名を口にしたのだろう。

■ 「僕のバッグを担いでほしい」

 昨年大会で早藤キャディは18番グリーン上でピンフラッグの旗部分を抜き取り、竿をカップに戻して、一礼した。

 今年のマスターズが終わったとき、シェフラーの相棒キャディ、テッド・スコットは、18番のピンフラッグを丸ごと抱えて歩き出した。その姿は「これが僕の愛しい優勝トロフィーだ」と喜びを噛み締めているかのようで、なんとも微笑ましかった。

 シェフラーとスコットがタッグを組んだのは、昨年11月のこと。スコットは、それ以前はバッバ・ワトソンの相棒キャディを2006年から務め、ワトソンのマスターズ2勝を含む通算12勝のすべてをスコットが支えた。

 しかし、ワトソンとスコットは昨季限りでコンビを解消。キャディ業から引退しようと考えていたスコットに声をかけ、「僕のバッグを担いでほしい」と依頼したのが、シェフラーだった。

 シェフラーは2020年から米ツアーに挑み始め、デビュー年も2021年も勝てそうで勝てず、初優勝までに思いのほか時間がかかっていた。

 ところが、スコットがキャディを務め始めた途端、成績は急激に上向き始め、今年2月のフェニックス・オープンで初優勝を挙げると、アーノルド・パーマー招待で2勝目、デル・テクノロジーズ・マッチプレー選手権で3勝目を挙げ、ついにはマスターズを制覇してメジャー初制覇と通算4勝目を達成。

 相棒キャディとなったスコットが、コース上で、試合において、どれほど大きな支えになっているかが窺い知れる。

 そして、シェフラーには、コース以外の場所で、大きな支えになってくれている人がいる。愛妻メレディスのことだ。

 シェフラーとメレディスはテキサス州内の同じハイスクールで知り合い、シェフラーはテキサス大学へ、メレディスはテキサスA&Mへと進学先は別々になったが、2人の交際はその後も続いた。

 シェフラーがプロゴルファーになり、転戦生活を開始すると、メレディスは貧困や飢えに苦しむ人々を支援する非営利団体の活動にインターンシップとして参加し、ハイチなどの国々へ赴いた。その後、彼女はテネシー州内の災害救助支援団体に勤め、以後は大学時代の仲間とともにイベント企画会社を共同設立するなどビジネスにも積極的。

 社会人として、まったく異なる道をそれぞれに歩み出し、物理的にも離れ離れが続いた2人だったが、シェフラーとメレディスの愛情は、むしろ深まり、2020年12月に結婚。それからは、妻は夫の転戦に同行することが増え、彼女は選手としての夫の長所も短所も、すっかり飲み込んでいた。

 今年2月から次々に3つの勝利を重ねたシェフラーは、世界ランキング1位になり、「時の人」と呼ばれ、マスターズ3日目を単独首位で終えた。そして、最終日を最終組で回る運命の時を翌日に控えていた土曜日の夜、彼の緊張はマックス状態だった。

 ディナーを終えて、宿舎に戻る際、大会期間中、選手に貸与されているコーテシー・カーの車内で、シェフラーは食べたばかりのディナーの大半を吐いてしまった。

「ここ数日、胃がよじれた感じで、ずっと調子は最悪だったけど、あの車内での出来事は、本当に最悪だった」

 シェフラーは優勝会見で初めてそう明かしたが、胃腸が萎縮して機能しなくなってしまうほど大きなプレッシャーにさらされていた夫の異変に、妻は早くから気付いていた。わかっていたからこそ、彼女はその出来事をあえて明るく笑い飛ばし、夫がシリアスになりすぎないよう気遣った。

「ベイビーのように泣いていた」

 4月10日。いよいよ最終日となった日曜日の朝、午後2時40分のティタイムを待つまでの時間は「ことさらに長く感じられた」とシェフラーは振り返った。

 その長い待ち時間に、まだ宿舎で妻と2人で朝食を取っていたシェフラーは「まるでベイビーのように泣いた」という。

「どうしたらいいか、わからない。僕には、まだ、マスターズで勝つための準備なんて、できていないんだ。こんなすごいこと、僕には到底できそうもない……」

 夫が試合前に緊張やプレッシャーで泣いたのは、その朝が「初めてだった」とメレディスは言う。

 しかし、そこから先の彼女の対応が素晴らしかった。2人はともに敬虔なクリスチャンで、何かを考えるとき、何かを決めるときは、必ず「God」に教えを乞う。

 だから、人生で大事な場面となったこのときも、メレディスはシェフラーにこう語りかけたそうだ。

「まだ勝つ準備ができていないだなんて、誰に向かって言っているの? それを言う相手は、妻ではなく、神でしょ? だって、運命をコントロールし、アナタを導いているのは神でしょ? その神が『今日はアナタの日』と決めているのなら、今日はアナタの日になる」

 もしも緊張して大崩れして82を叩いたら、「それはそれで人生の糧にすればいいし、そうするのがアナタの人生にとってベストなのだと、すでに神は考えてくれている。そう定めてくれている」と妻は夫に説いて聞かせた。

 そんなメレディスの言葉を聞いているうちに、シェフラーの心は鎮まり、戦う準備ができたという。

「家(宿舎)を出るまでの時間が一番長く感じられた。その時間が一番長くてタフだった。でも、メレディスと話した後、ひとたび家を出て、コースに入ったら、心が整った」

 それでも、1番ティではシェフラーは「少し震えていた」と、キャディのスコットは振り返った。持って出た3打のリードは出だしの2ホールで2打差へ、1打差へと縮められた。

「でも、3番のチップイン・バーディーでスコッティは完全に自分を取り戻した。そこから先は、いつものように、前進あるのみになった」

 相棒キャディも、妻も、手に取るようにシェフラーの心を感じ、我がことのように、いやいや、我がこと以上に支え続けてくれた。

 それが、シェフラーの最大の勝因となったこと、彼の勝利が「チームの勝利だった」というこの物語は、また一つ、マスターズの歴史に刻まれ、後世に語り継がれる。

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☘️ヤフコメ❗️ピックアップ☘️

✅ 今まで読んだ舩越さんの記事の中で1番胸に迫りました
シェフラーはとても落ち着いて見えたけど、そんなに苦しんでたんですね
勿論、すごいプレッシャーがあるのは理解できるが、吐いて、涙して
理解と愛溢れる奥様が傍にいて本当に良かった
優勝してから奥様、家族とひとつひとつ噛み締めるように抱き合うシーンが美しかったですね

マスターズチャンピオンとなることの凄さを感じる度に、松山くんの物凄さも実感します
日本の宝だと思います
✅ ゴルフを含めて、メンタルは競技スポーツのパフォーマンスに大きな影響がありますね。低レベルですがゴルフクラブの毎月の月例、年1回のクラブ選手権やクラブ対抗競技でも、初めて参加するプレーヤーの中には、傍から見ていて震えているのが分かったり、また、緊張のためか最初の数ホールで大たたきする人も居ります。日本のゴルフトーナメントでも最終日の18番の優勝が掛かった短いパットで緊張して、仕切り直しをした場面を何度か見たことがあります。マスターズのような世界一を決める舞台は、あまりにも部隊が違いすぎますが、シェフラーにとってマスターズの最終日は、恐らく大変なストレスだったのでしょう。でも、あの3番のチップインバーディーで精神的に落ち着いたのでしょうね。
✅ 最終日、10打差のスタートであったとしても…
あのグリーンジャケットの袖を通すのは、トッププロであっても大変な事なんだろう。
かつて、ホワイトシャークと呼ばれ圧倒的な強さを誇った、あの、グレグノーマンでさえ、大差をつけてスタートした最終日に大崩れしてグリーンジャケットを逃した。あの日のアーメンコーナーの惨劇、逆転優勝したファルドの申し訳なさそうな顔が忘れられない。それ以降、ノーマンは立ち直れなかったな。
マスターズは、他のメジャーをいくつか差し出しても、トッププロにとって、どうしても欲しいタイトルなんだろな。
そうすると、やっぱり、松山くんは途轍もなく凄いな。偉大やな。

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