「部下が育たない上司」は仕事の振り方を知らない
✍️記事要約
「データの作成を頼んだのになかなか上がってこない」「チャットで意見を聞いても返事がこない」「イマドキの若者は叱られ慣れていないと聞いたので優しく注意をしたのに改善されない」。
今、このような悩みに直面している上司は多いのではないでしょうか。「もうどう指導をしたらいいのか、わからない!」と匙を投げたくなることもあるでしょう。だからと言って、逃げ出すことはできません。
では、どのように指導をしたらいいのでしょうか。『イマドキ部下を伸ばす7つの技術』の著者であり、実際にイマドキの若者(現役高校生、大学生、新入社員)を指導する福山敦士さんがコツを紹介します。
■「何をしたらいいのかわからない部下」には手順を示す
部下に仕事を振るときは、迷うことのないよう指示を具体的にしましょう。ここで重要なのは「ステップ1、2、3という手順で示す」ことです。
そう工夫をすることで、部下の「何をしたらいいのかわからない」を解消することができ、部下もやるべきことを具体的な行動へと落とし込むことができます。
上司と部下では、仕事に対する視野や物事をどの位置から捉えるかという視座が異なります。
そのため、上司にとっては簡単だと思われる仕事でも、部下にとっては難しいことが往々にしてあるのです。そのような違いを踏まえて、具体的な手順をステップとして提示してあげることが大事です。
たとえば、営業をしたことがない人に対し、「お客さんのもとに100回足を運べばOK」と言っても、その人は行動できません。
そうではなく、
「ステップ1:見込み客の連絡先をリストアップする」
「ステップ2:アプローチ用のスクリプトを用意する」
「ステップ3:目標を決めてアプローチし、行動と成果を集計して改善していく」
などのように、手順を具体化します。
ここまで落とし込めれば、営業をしたことがない人でも行動できます。もっと言えば、新人でも自ら実践できるような手順書やマニュアルを準備できるかどうかが、上司としての力量を表すことにもなるのです。
部下に何かを伝えるときは、あらかじめ、こちらの要求を1つに絞っておきましょう。重要なことだけを適切に伝えるのがポイントです。
とくに〝要求〞という点に着目すると、こちらが求めていることを示したうえで、上司は「どんと構える」ことが大事です。
たとえば資料作成において、「間違ってもいいし、誤字・脱字があってもいいから、思い切って自分の意見を書いてこい!」と伝えてあげること。それが、良い提案を引き出すための伝え方です。
新規事業のアイデアを出してもらうときなども、「さまざまな角度から検討し、再現性の高い、より効果的な案を出すように」と指示をすると、部下は思い切った提案ができません。
また、「営業利益は○億円を目指すこと」「人手は最小限に留めること」などの要素を加えれば加えるほど、提案は難しくなってしまいます。
もちろん上司としては、そのような要素を付け加えたくなるのも無理はありません。より良い提案を得たいという気持ちはよくわかります。
ただ、そこをぐっと堪えて、「なんでもいいから売り上げアップや会社が盛り上がる提案を持ってきてみて」と伝えたほうが、おもしろい提案を得られやすいのです。要求は絞り込み、どんと構えていましょう。
要求を絞り込んだうえで任せていれば、部下は動きやすくなります。あとは上司が部下の動きを見守り、後方から支援してあげればいいのです。
■ その場で注意することが大切
物事を伝えるコミュニケーションには、「同期」のものと「非同期」のものがあります。同期とはつまりリアルタイムのことで、非同期とはそうでないものを指します。悪い行いを注意するときには、同期(リアルタイム)で行うのがポイントです。
たとえば、部下が遅刻をしたり忘れ物をしたりしたとき。注意を後回しにするのではなく、その場でしっかりと指摘します。それをせずに、あとから注意すると、部下は「なんだよ、黙認してたくせに……」と思ってしまいます。その結果、納得してもらいにくくなります。
またよくあるのは、ある注意をしているときに別の指摘を持ち出してしまうことです。たとえば、「さっき、挨拶がちゃんとできていなかったな。それにこの前は名刺を忘れたし……」というものです。
本題と違う話を持ち出してしまうと、指導内容の意味や意義が拡散してしまい、本当に伝えたいことが伝わりません。
そうならないよう、上司はリアルタイムで、問題となった点のみを注意し、部下が何を改善するべきかが分かるよう導くことが大切です。それが部下の行動を、その場で〝制御〞することにもなります。
もちろん、その都度注意するのは大変なのですが、それだけのエネルギーを費やして部下を成長させていくのも上司の仕事なのです。
■ 部下に伝えることの「本当の目的」を知る
仕事の目的や目標、詳しい内容、情報などを部下にきちんと伝えることは、上司の大切な仕事の1つです。
ただ、伝えること自体が目的ではありません。伝えるだけでは、知識の「伝達」にしかならず、部下は動くことができません。
伝えることの本当の目的は、部下に動いてもらうことにあります。伝え方を工夫するだけで、部下は自ら行動するようになります。
これまでの部下への指導方法では成立しなくなっているということを忘れずに、イマドキ部下を伸ばす接し方、伝え方で彼・彼女らが成長していけるよう、導いてあげましょう。