上司へ部下が使うべき最適な返信フレーズとは
✍️記事要約
上司から急ぎの仕事を頼まれたとき、どのように返信するべきか。マナー講師の諏内えみさんは「『了解しました』は同僚や部下に対して使う言葉なのでNG。『承知しました』は間違いではないが、急ぎの仕事であればタイムリミットを確認する必要があるでしょう」という――。
■ 上司に「参考になりました」は失礼
上司から仕事についてのレクチャーを受けた時、つい言ってしまいがちなのが「参考になりました」。
「参考」は、考えの足しにするという意味合いなので、目上の人に使うのは失礼にあたります。もし使うとすれば、「ご参考になれば幸いです」とあなたが上司に何か情報を渡す時です。
また、「大変勉強になりました」は一見良さそうな言い回しですが、あまりお勧めできません。「勉強になりました」は汎用性の高い言葉です。レクチャーやアドバイスを受けた時だけでなく、自慢話を聞かされた時にも使えます。
どの場面でも使える言葉というのは丁寧さや敬意に欠ける印象になり、感謝の気持ちが伝わりにくいのです。
上司のレクチャーを特別なこととしてありがたく受け止めた、という気持ちを伝えるならば、「○○の点は気づきませんでした。大変学びになりました」と言いましょう。
具体的な点に言及することで、相手(上司)は自分のアドバイスが確実に届いたと感じます。そして「勉強」よりも「学び」の方が、主体性を感じます。小さなことですが、ニュアンスに配慮して言葉を選択することが大きな差を生むのです。
■「これからは気をつけます」より使えるフレーズ
先ほどの「勉強になりました」のように、汎用性の高い常套句はいくつかあります。
例えば、ミスをした時の「これからは気をつけます」。内容的に間違ってはいないのですが、そればかり言っていると「これからはって、この間も言ってたでしょ」と思われてしまいます。
「これからは気をつけます」の代わりに、「今後は随時確認を怠らず、不明な点があればご相談させていただくようにします」「ご迷惑をおかけしてしまった件については、チームで共有し再発防止に取り組みます」のように、具体性のある言い回しのバリエーションを持っておくといいでしょう。
また、上司の言葉に相槌を打つ時に「おっしゃる通りです」と言っていませんか? これも、繰り返し使うと耳障りな印象を受けます。「ご理解いただいている通りです」と、少し角度を変えた言い回しを身につけておきましょう。
常套句や定型句は、“とりあえず言っておけばいい無難な言葉”でもあります。使い古された言葉ともいえるでしょう。よく使ってしまう言葉を棚卸ししてチェックしておくことも大切です。
■ 「了解」は×、「承知」だけでは△
上司からの仕事の指示は、必ずしも具体的であるとは限りません。「ちょっと、これをあれしておいて」という指示も、あながち冗談とは言えないでしょう。
例えば「明日までに書類を用意して」と言われた場合。「はい、喜んで!」とばかりに元気よく「承知しました」とだけ答えてはいけません。ちなみに、「了解しました」は同僚や部下に対して使う言葉なのでNG。「承知」自体は間違っていません。
何がダメなのかというと、「明日まで」が明日の何時なのかを確認していないからです。「明日」といっても、始業から終業まではかなりの幅があります。
始業までにであれば、今日残業しなくてはなりません。お昼までにであれば、始業からすぐに取り掛からなくてはなりません。あなたの作業スケジュールを立てる上で、タイムリミットは非常に重要な情報です。
「承知いたしました。明日の18時まででよろしいでしょうか?」と聞きましょう。依頼内容を注意深く見て、漠然とした部分があればその場で確認します。
タイムリミットを双方で共有し、時間内にきちんと提出する姿勢は、上司の信頼につながります。
■ デキる部下は知っている仕事の断り方
いくら上司の指示だからといって、どうしても引き受けられないこともあります。もし、帰り際に大量の仕事を頼まれたとしたら、さすがに断りたくもなります。断る断らない以前に、コンプライアンス上の問題でもありますが。
無理難題を押し付けられた時、「無理です」「できません」と答えてしまうと、反抗的で突き放した印象になり、良好な関係を保てなくなる可能性があります。その場合は、「申し訳ございません。本日は所用があるのですが、明日の午前でしたら作業できます」と答えましょう。
できない理由を「所用」とシンプルに伝え、「明日の午前」という代替案を示します。そうすると、依頼自体を拒否する態度ではなく、今できないだけで何とかやり遂げたいという誠意ややる気を見せることができます。
上司におもねるためではなく、これまで築いてきた良好な関係性を保ち、仕事をしやすくするためのコミュニケーションのコツととらえてください。
■ 「ハンコください」ではダメなワケ
昨今はビジネス文書のデジタル化が進み、上司に捺印をもらう機会は減少したかもしれません。とはいえ、紙でのやりとりが主流の企業もありますし、捺印が必要なケースもあることでしょう。
判子であれ電子印鑑であれ、上司に承認印をもらう時の頼み方には注意が必要です。一般的なのが「ここにご捺印をいただけますか?」。言い方として悪くはないのですが、果たして捺印を依頼する根本的な意味を理解しているでしょうか。
捺印は、昔も今も責任が伴う大切な業務です。捺印したということは、内容を承認したという証しなのです。上司に頼むのは、「判子を押す」こと以前に、「内容を確認してほしい」ということ。ここをわかっていない人がけっこういます。
「恐れ入りますが、こちらの書類にお目通しいただき、よろしければご捺印をお願いします」が正しい頼み方です。あくまでも、依頼→確認→承認→捺印という流れであることを忘れずに。
■ 上司に「時間をください」のベストな言い換え
上司への頼みごととして、捺印と並んでよくあるのが「時間をください」ということ。相談や確認のため、1対1で話をする時間を設けてもらうことで防げるトラブルは数多くあります。
その際、「ヒマな時があれば……」と言うのは言語道断にしても、「いつなら大丈夫でしょうか?」「ご都合のよい日を教えていただけますか?」と大まかな聞き方をしていないでしょうか。
相手(上司)が「じゃあ、今日の15時で」と言ったとして、その時間に会議が入っていたとしたら「あの……、その時間は会議で……」と答えざるを得ません。「じゃあ、逆にいつならいいわけ?」と返される危険性もあります。
都合を聞く時は、「ご都合のよい日時を、3つか4つ挙げていただけるとありがたいのですが」と、複数の候補をもらうようにしましょう。複数あれば、どこかしらで調整はできるものです。「いくつかいただけますか?」ではなく、「3つか4つ」と具体的な数を示すことで、互いにストレスなくコミュニケーションができます。
曖昧で漠然としたままやりとりを続けていると、必ずミスが起こります。「わかったつもり」「わかっているだろう」という思い込みも、ミスの火種になります。ひとつひとつの業務を明確化し、「デキる部下」として評価を高めていきましょう。