スティーブ・ジョブズが語った「成功と失敗」の明暗を分けるものとは
✍️記事要約
筆者は、特に頭が良いわけでも運動神経が良いわけでもありません。
なにか秀でた(ある分野を学んだり、スキルを身につけたりするのが人より早いという意味での)才能があるわけでもありません。ごく平均的な人間です。
だからこそ、Appleの共同創業者スティーブ・ジョブズの残した名言のうちでも、次の言葉にいちばん惹かれるのかもしれません
成功した起業家とそうでない起業家を分けるものの約半分は、まさに継続する力だと確信しています。起業するというのはとても困難なことで、自分の人生の多くを注ぎ込んでしまいます。
つらい時期も多くほとんどの人があきらめてしまいますが、継続するのが実に厳しいことだとわかるので、そうやってあきらめていく人々を責めるつもりはありません。
ここでジョブズはスタートアップ企業の創業者について述べていますが、この原則はいろいろな分野に当てはまります。
■やり続けることに大きな意義がある
私に備わっている知性は週に2冊以上の本を読むことから得たもので、体力はほぼ毎日運動しているおかげです。私の文章力は、毎日書いているおかげでしょう。
いずれの試みをとっても、今の成功があるのはやる気がないときでも続けてきたからです。
意義あることを成し遂げるにあたって、根気よく続けることが1つの要因にすぎないのは確かですが、やり続けることには大きな意義があります。
たとえば、『Review of Educational Research』に掲載されたメタ分析によると、継続的に講義に出席している大学生ほど(当然のことながら)成績が良いという結果が出ています。
これは、因果関係というより相関関係のように聞こえる(賢い人ほど定期的に教室に通う傾向があるの)かもしれませんが、それだけではありません。
研究者によれば、次の通り。
講義の出席率は、SATなどの標準化された入学試験のスコア、高校のGPA(Grade Point Average、成績)、学習習慣、学習スキルなど、学業成績の予測因子として知られているほかのどの項目よりも、大学生の成績を(より正確に)予測します。
また、真面目さや意欲といった学生の特性との関連性が低いが故に、講義の出席率は、大学生の成績に独自分散が多く見られる原因を説明できることを研究は示唆しています。
ずば抜けて頭脳明晰でもなくても、やる気満々でなくても、成績優秀な学生でなくても、出席し続ける限り、あなたはおそらくうまくやっていけるでしょう。
これは大概のことに該当します。
■ 全部やり遂げられなくても大丈夫
たとえば、営業の電話を1日に10件かけることを目標にしているとして、今日はやる気が出ないとします。そんな時は、2件だけかけてみましょう。
まったく何もしないよりはましですし、少しでも計画を守ることで習慣を維持することができます。習慣というのは、確立するのは本当に難しいことですが、破ってしまうのはあっという間です。さらに、その2回の電話で、やる気のなさから抜け出せるかもしれません。
「何かをやりたくないときは、5分だけやると自分自身と駆け引きしてみるのがいい」とインスタグラムの創業者であるケビン・シストロム(Kevin Systrom)は言います。
5分後には、全部やり遂げているかもしれない。
全部やり遂げられなくても大丈夫。毎日続けることで、コメディアン、ジェリー・サインフェルドのいう「カレンダーの鎖」(1日に1つネタを考案できたらカレンダーにチェックを入れ、習慣の鎖を途切らせないテクニックのこと)に、少なくとも部分的にチェックを入れ続けることができるのです。
■ ある行動を継続すると「行動そのもの」になる
そして、こんな効果も。定期的に何かをすることで、不思議なことにその行為そのものになったりするのです。
あなたがビジネスをはじめようと思ったとします。最初は、ToDoリストをチェックするのが精一杯。他の人からのアドバイスに従ったり、自分の道を模索していたりするだけかもしれません。
しかし、やがてあなたは自分が事業を起こして経営している人間であるとは思わなくなります。そうではなく、自身が起業家であると自覚しそのように振る舞うようになるでしょう。
あるいは、従業員を雇ったとしましょう。最初は、彼らを管理することに努めているわけですが、毎日続けているうちに自分は経営者であると自覚するようになるのです。
指導しようと意識することがなくなり、自分自身がリーダーであり、その自覚に従って行動するのです。
これはどんな目標に関しても同様で、ある行動を継続していくと、あなたはその行動そのものになるということです。
ジョギングをはじめたばかりの人は、自分をランナーとは呼べないでしょう。ところが何日も続けているうちに、ある日を境に自分を「走る人」でなく「ランナー」であると自覚していることに気づくのです。
■ 目標に向かって努力を続けることが重要
そう簡単にはいかないのでは、とお考えですか? いや、科学がそう証明しているのです。
学校の教師が 「片付けを手伝って」と言った時よりも「片付け係になって」と声かけをした時のほうが、児童が片付けをする確率が30%高かったという研究結果が『Child Development』(こどもの発達)誌に掲載されましています。
この些細な言い換えが効果的なのは児童に限りません。
『Proceedings of the National Academy of Sciences』誌に掲載された研究によると、「投票するように」という通知よりも、「有権者になるように」と促した通知を受け取った人のほうが、有権者登録をする確率が15パーセントも高かったそうです。
ジョブズが「忍耐」を重視したのもそのためで、目標に向かって努力を続けることが重要であることは明らかです。継続することで成功は保証されませんが、あきらめたらそこで終わりです。
営業の才能がないとお悩みですか? 続けていれば、営業スキルは身につきます。
人を率いる才能がないのではとお思いですか? 大抵のリーダーシップスキル(部下へのフィードバック、チーム・ビルディング、目標の設定、他者への配慮、意見を募る、優先案件に集中するなど)は、継続することで身についてきます。
多くの分野において、成功に必要なのは才能ではありません。成功に必要なのは、スキルです。 そして、そのスキルは身につけることができるのです。あきらめない気概がありさえすれば、です。