慶應大卒“モーレツ社員”「定年後の自分」の危うさ
✍️記事要約
老後年金だけでは暮らせない時代となったいま、「定年後のキャリア」をどのように考えるべきか……金澤美冬氏の著書『おじさんの定年前の準備、定年後のスタート 今こそプロティアン・ライフキャリア実践!』(総合法令出版)より、現役世代の“生の声”をみていきましょう。
「死ぬまで現役」でなければ、マグロと同じですぐ死んでしまうと思います―― 石井義之さん(46歳/定年まであと11年)
<略歴>
1974年千葉県出身。
慶應義塾大学卒業後、大手通信企業に就職。法人営業、人事、広報、経営企画などを経験した後、グループ会社である生活インフラの自動検針や監視業務を行う会社に出向中。
現在の役職は部長で、今のところ定年を迎える際、雇用延長する希望はないものの、むしろ「定年」という枠組み自体を考えないことを前提に「死ぬまで現役」「周囲の環境から求められる仕事をし続けたい」と考えている。
妻と小学生の子と円満な家庭を築いている。
<資格・取り組み>
IoTの資格を持ち、現在はキャリアコンサルタントの資格を取得するため勉強中。取得できた暁には、資格活用だけでなく資格を通じて学んだことを、資格と親和性の高い仕事に活かしていきたいと考えている。
――現在は大手通信企業のグループ会社に出向され部長職でいらっしゃいますね。
石井:もともとは本体会社にいましたが、いまはグループ会社に出向して部長職をしています。役職定年は57歳くらいだったと思うので(笑)、あと10~11年くらいですかね。今の会社では、私は若いほうなんです。
現在、部長職を担っていますが、同年代ではまだ担当者が多く、また課長などの役職のある人たちは自分よりさらに上の世代が多いです。
――そうなると、同じ目線で「定年後」「セカンドキャリア」の話をできるような人はいなさそうですね。
石井:全くいないですね。同年代で話すことと言えば「今の仕事の愚痴」だけです(笑)。それは冗談として、少し上の世代の方と話をしても、グループ会社ということもあるのか普通に雇用延長を希望される方が圧倒的に多いと感じています。そのため「定年後」「セカンドキャリア」について、ますます話をする機会はないですね。
――ある意味では、古い体質と言えそうでしょうか。
がむしゃらに働いた末、40歳を過ぎて「メンタル不調」に
石井:自分が入社したときと比較すると、だいぶ変わってきたのかなとは思います。
ただ、当初の私は「定年後」や「セカンドキャリア」はもちろんのこと、自分自身という存在を世の中に最大限活かすためにどうすべきなのかといったことを考えることもなく、ひたすら会社から与えていただく仕事に対してモーレツ社員として働いてきました。
ある意味、世の中を見ず、与えられた仕事に熱中していたのですが、今考えると自分が本当にやりたいこととのギャップを顧みずにやり過ぎた結果、40歳を過ぎた頃に体調を崩してしまいました。
いわゆるメンタル的な病気として診断されたのですが、このことで会社を長期にわたって休むことを余儀なくされてしまったのです。同僚には本当に迷惑をかけたなと思っています。
石井:ただ、この休養が自分にとっては良い時間でした。冷静に「自分がいる会社」と「会社以外のこと」をゆっくり考え直すことができたからです。
そこから、たどり着いた考えは「会社という組織の中だけで過ごすのはもったいない」「もっともっと何かできるはずだし、それを自分もやっていきたい」ということでした。「少し休んで回復できたら、会社の仕事はもちろん、それ以外のこともやっていきたい」と思い、復帰前後からそれまでにはしていなかったことをいろいろと始めるようになりました。
――どんなことを始められたのですか?
石井:休養中もですが、少し体調が戻ってきてから、様々なセミナーに毎日のように通うようになりました。
まずはIT系ですね。私の会社もIT系の部類に入るのですが、職場で働いているうちは、目の前の仕事に集中するあまり、未来のテクノロジーのことまでは考えられていなかったと思います。周りの社員も同じだったかもしれません。
そのため、IT系のセミナーに参加し、そこで得た最新の取り組みや情報を会社にフィードバックし、もちろん自分自身にも活かすことができれば良いなと考えてのことでした。
実際、今では当たり前になりつつある「IoT」に対しても、当時の私は言葉では理解できていても、どんな技術が使われ、どのように生活に役立っていくのか、具体的なことはよく分かっていませんでした。
それを私が学び、さらに社内の業務にも取り入れることができたら、自分も含めて社員全体でも最新技術の活用方法を体感できるわけで、その理解度も加速するのではと考えていました。
「リスク毛嫌い」の風潮を逆手に…復帰後は業務改善を“トライアル”
――日本の社会全体では、“新しいことへの取り組み”に及び腰になる先入観がまだありますが、社内ではIoTの活用を受け入れてもらえたんですか。
石井:確かに、新しいことを始める際には失敗する可能性も大きいため、そのリスクを背負うことを毛嫌いする風潮は会社に限らず、まだ日本の社会全体にあるのかもしれません。「総論賛成・各論反対」とも言えるかもしれませんね。
こういった風潮だからか、「トライアル」という言葉をよく耳にする気がします。要は「斬新なことをいきなりやるのではなく、小っちゃくやって様子を見よう」ということです。
このトライアルを逆手にとり、私は自分が担当する業務改善をIoTの力で実現させてみたいと考えました。
具体的に言うと、在庫管理や固定資産管理にIoTを取り入れたわけです。それまでは帳簿を片手に紙とペンでいちいちチェックしていましたので、その労力削減という目的を伝えると、すぐに受け入れてもらえました。
その点では受け入れていただいた当時の上司には感謝しかないのですが、今で言うDX(デジタルトランスフォーメーション)の先駆けみたいなことで、やってみると思った通りそれなりの達成感があり、自分としてはやりがいを持て、自信の回復にまでつながる出来事だったかと思います。
資格取得、夜間学校、社外活動…休養を経て広がる「夢」
――こういった革新的な取り組みの実践は、どのような経緯で思いついたのでしょう。
石井:「頭を空っぽにして」セミナーに参加したことが大きかったと思います。空っぽにしたから、業務の延長線上ではなく、イチから最新技術の仕組みや活用方法が頭にすーっと入ってきて、自分なりの発想というものを自然と出せるようになったのだと思います。
同時に、私のこのような経験や行動をさらに飛躍させて「第三者のキャリア形成の手助けができたら良いな」と思うようにもなりました。
――現在はキャリアコンサルタント資格取得のために勉強されているほか、「おじさんLCC」を含む2~3のコミュニティに参加されているようですね。会社での仕事をやりながら、こういった社外での活動をされる上で大変なことはありませんか?
石井:現在、キャリアコンサルタント資格取得のための勉強をほぼ毎日やっており、週に2回夜間学校にも通っています。また、コミュニティについては週1~2回程度、ZOOMなどのオンラインで参加しています。
でも、今のところ大変なことはないです。キャリアコンサルタントの資格取得後は、より専門性を高めるために大学院にも通ってみたいなと考えてもいます。どうなるかはまだ分かりませんが(笑)。
「もし」という言葉はあまり使いたくないのですが、10年早く気づいて取り組んでいれば、転職などを通じたキャリアアップ、キャリア形成をしていたかもしれませんし、現在よりも多くの社外とのヒューマンネットワークの形成が図れたのかもしれません。
もちろん、今の会社での10年間だったからこそ、会社の中で貴重な経験もさせていただいたことはゆるぎない事実としてあると思っています。どっちが良くて、どっちが悪い、と決めつけることは意味のないことだと思うので、今と未来のことしか考えていません。
また、まだ先の話になりますが、今いる会社で定年を迎えた後の雇用延長ということについては、本当に悩むのではないかと今から考えさせられます。定年後に「家にずっといる」ということもあり得ないですし(笑)。はっきり言って「死ぬまで現役」で動き続けなければ、自分はマグロと同じですぐに死んじゃうんじゃなかろうかと思ったりもします(笑)。
そして、会社を休んでいる間に分かったことは、誰ともコミュニケーションを取ることなく、緊張感もなく、ただ1人孤独でいるような「暇」という状況には絶対に耐えられないということでした。
暇になると、不安というより自分自身が情けなくなってくるんです。休養中に、ふと「俺、定年後こうなってしまうんじゃないか」と思ったんですね。それまでは「定年後の生活」なんて考えることさえしなかったわけですが、あの休養で「このままじゃダメだ」と考え直し行動したことが今につながり、未来にもつながっていくのだと思っています。
■英訳
In an era where it’s no longer possible to live solely on a pension after retirement, how should we think about "post-retirement careers"? Let's explore the "real voices" of the current generation from Mifuyu Kanazawa's book, *Preparing for Retirement and Starting After Retirement for Middle-aged Men: Now is the Time to Practice Protean Life Careers!* (Sogo Horei Publishing).
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"If you don't stay active until you die, you'll end up like a tuna fish and die quickly." — Yoshiyuki Ishii (46 years old, 11 years until retirement)
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**Profile:**
- Born in Chiba Prefecture in 1974.
- After graduating from Keio University, he joined a major telecommunications company. He has experience in corporate sales, HR, PR, and business planning, and is currently seconded to a group company that conducts automatic meter reading and monitoring of life infrastructure.
- Currently holding the position of department head, he has no desire to extend his employment upon reaching retirement age. Rather, he aims to stay active and work on tasks required by his environment until the end.
- He maintains a harmonious family with his wife and elementary school-aged child.
**Qualifications and Endeavors:**
- Holds IoT qualifications and is currently studying to obtain a career consultant qualification. Once obtained, he hopes to apply what he learned through the qualification to jobs closely related to it.
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**Interview Excerpts:**
- **Q: You are currently seconded to a group company in a managerial position.**
Ishii: Originally, I was with the main company, but now I am seconded to a group company as a department head. I think the retirement age for my position is around 57, so I have about 10-11 years left. In my current company, I am considered young.
Currently, I am a department head, but many in my age group are still in lower positions, and those in managerial roles are mostly from an older generation.
- **Q: So, there doesn’t seem to be anyone with whom you can discuss "post-retirement" and "second careers" on the same level?**
Ishii: Not at all. Discussions with my peers mostly revolve around complaints about our current jobs (laughs). Jokes aside, when I talk to people from the slightly older generation, it seems that many of them are hoping for extended employment, perhaps because we are a group company. As a result, there are even fewer opportunities to discuss "post-retirement" and "second careers."
- **Q: In a way, it could be considered an old-fashioned mindset?**
Ishii: Compared to when I first joined, things have changed quite a bit, I think.
However, initially, I didn't think about "post-retirement" or "second careers," nor did I consider how to maximize my existence in the world. I worked intensely as a corporate warrior, focusing solely on the tasks assigned to me.
Without considering what I truly wanted to do, I worked too hard and ended up experiencing a mental health issue after I turned 40.
Diagnosed with a mental illness, I had to take a long leave from work. I felt I had caused significant inconvenience to my colleagues.
- **Q: Was the rest period beneficial for you in any way?**
Ishii: Yes, the rest period allowed me to reflect calmly on "the company I belong to" and "things outside the company."
This led me to realize that "spending all my time within the company organization is a waste" and that "I should be able to do more." I started trying new things that I hadn’t done before, both before and after returning to work.
- **Q: What kind of new things did you start?**
Ishii: Even during my rest period, but especially as I began to recover, I attended various seminars almost daily.
Mainly IT-related ones. Although my company falls into the IT category, while working, I couldn't focus on future technologies due to the demands of my current tasks. My colleagues were likely in the same situation.
Therefore, I attended IT seminars to bring back the latest knowledge and practices to the company and to apply them to my work and myself.
For instance, though IoT is now commonplace, back then, even if I understood the term, I wasn’t sure how the technology was used or how it benefited daily life.
By learning and integrating IoT into our internal processes, I thought everyone, including myself, could better understand and leverage the latest technologies.
- **Q: In a society often hesitant about new initiatives, were you able to incorporate IoT in the company?**
Ishii: Indeed, there is a pervasive hesitation to embrace new things due to the potential risk of failure, which is a broader issue in Japanese society, not just companies.
I often hear the term "trial," meaning to try new ideas on a small scale first. I leveraged this by incorporating IoT into inventory and fixed asset management, which was quickly accepted due to the evident reduction in labor.
I’m grateful to my then-superior for accepting this. It was a pioneering effort in what is now known as DX (digital transformation), and it gave me a sense of accomplishment and confidence.
- **Q: How did you come up with such innovative initiatives?**
Ishii: Participating in seminars with an open mind played a significant role. By doing so, I could absorb the latest technological ideas from scratch, which naturally led to creative solutions.
This experience also made me want to help others develop their careers.
- **Q: You are currently studying for a career consultant qualification and participating in several communities. Is it challenging to balance these with your job?**
Ishii: I study almost daily for the career consultant qualification and attend night classes twice a week. I also participate in online community meetings once or twice a week.
So far, it hasn’t been difficult. After obtaining the qualification, I’m considering further specializing by attending graduate school. Although it's uncertain, it's a possibility (laughs).
Although I don’t like to use "if only," had I realized this 10 years earlier, I might have pursued career advancement through job changes and built a broader network outside the company.
Nonetheless, the experiences and opportunities I’ve had in my current company are invaluable. I focus only on the present and the future without dwelling on the past.
Looking ahead, I’m uncertain about extending my employment after retirement. I can’t imagine "staying home all the time" (laughs). Honestly, I feel like I would "die quickly like a tuna fish" if I don't keep active until I die (laughs).
During my leave, I realized that I cannot endure "idleness" without communication or tension. Being idle makes me feel pathetic rather than anxious. It dawned on me during my rest that I might end up this way post-retirement. Until then, I hadn’t considered "post-retirement life," but that break made me rethink and act, leading to my current and future plans.
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☘️ヤフコメ❗️ピックアップ☘️
✅ 自分の仕事が収入に直結する自営業は悪くない。私は夏休み一ヶ月を教授に与えられていた国立大学の国家公務員職を辞職し自営業者となったので上司は居なく成り自分の好きなように生きて来た為か最近になってやっと気付いたが宮仕えの人とは全く価値観が全く違う事が分かって来た。毎日自分の好きなだけの仕事をし昼夜は時間を取って食事をしと言う外食だけの生活を何十年も続け50歳代には3年間バカンスを取ったが自分に取っては自然の成り行きだった。国家公務員のままでいたら年金と退職金はバッチリだったのにバカだなと家族には言われるが自由だからいいんじゃない?と思っている
✅ 海外出張年12回くらい行ってましたけど、給料が成果に見合ってないと思い、ぼちぼち働くようにシフトした。
そうすると趣味とか自分のやりたい事できる。
自分の生活優先で良いじゃないの。